コールセンターにおいて「受電」とは、文字通り「電話を受ける」業務のこと。
お客様が店舗等で購入した商品やサービスについて、その店舗窓口に代わってコールセンターのオペレーターが電話を受け付ける業務。
業務内容は主に、お客様からの注文の受付や問い合わせ、クレーム対応などがあります。
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受電率の改善例:10%以下から90%以上へ
日本年金機構でも、費用対効果を明確化して、コールセンターの改善に取り組んだことがあった。
以前、大きな社会問題になったのでご記憶の方も多いと思うが、社会保険庁の「ねんきんあんしんダイヤル」は電話を何度かけてもつながらないという大きな批判にさらされていた、あの問題だ。
世界のトップを10秒で納得させる資料の法則/三木雄信(著) 東洋経済新報社より
実際、当時のコールセンターの受電率(かかってきた電話に応対できた割合)は散々だった。数字にしてなんと10%以下。クレームが押し寄せても当然という状況だった。
しかし、現在では90%以上の受電率で推移している。いったい、何が功を奏したのか。
業務改善のプロとしてこの問題の解決に取り組んだ私はまず、あまりにも低い受電率の原因をリサーチした。すると、民間では考えられない前近代的な業務実態の数々が判明した。
その一つが、「ねんきん特別便」をはじめとするレターを、特定の日に集中して発送していたことだ。いかにもお役所的な行動だが、後先を考えず、現場サイドの都合だけで一斉に送付していたわけだ。
これでは電話がいちどきに集中するのも無理はない。レターの内容について確認したいと電話をかけた人が殺到し、電話はほぼふさがってしまった。そのとき、人はどういう行動をとるかといえば、何度もかけ直すのである。当時、だいたい一人の人が3回はかけ直していたため、見かけのコール数は3倍に膨れ上がった。
受電率の分母はこの見かけのコール数になるので、つながらなければ分母は増える。電話をかけて、ほぼオペレーターと話ができる場合の受電率はおよそ80%だが、この数字が70%を割り込むと、人は待ちきれなくなり、さらに電話をかけるようになる。結果として、あっという間に受電率は20%以下に低下してしまうのだ。
コールセンターの人員というのは、特定の時期だけ人を採用するということが難しい。いくら、この時期には大量のコールが予想されるからといって、その時期だけ人を増やし、閑散期にはまた人減らしをするというのは困難だ。
当然トレーニングコストも発生する。人の増減に合わせて、コールセンターの広さを調整するのも不可能だ。
結局、現状の人員で問題なく電話に応対できるように、入ってくるコールの方をコントロールするしかない。そこで、反応を見ながら、毎日少しずつレターを発送する方法に切り替えた。これが一番現実的であり、合理的な方法なのだ。さらに付け加えると、レターの文面も見直した。
というのも、当時送っていたレターの文面は法律用語が満載の、非常にわかりづらい文面だったからだ。コールセンターが対応にかなりの時間を要していたのもそのためだ。文面が、読み手の立場、対応するコールセンターの立場を無視した難しい表現であることに気づいたのも、要因分析レポートのおかげである。
発送時期の見直しと文面の改良。この2つの施策によって、受電率は飛躍的に改善したわけだ。
コールセンター参考書
相手の心をしっかりつかむ・プロフェッショナル電話力・話し方 聞き方 講座
恩田昭子(著)
日本実業出版社
現場の悩みを知り尽くしたプロが教える・クレーム対応の教科書
・心が折れないための21の実践テクニック
援川 聡(著)
ダイヤモンド社
コールセンター用語集|「さ」行|受電