古宮 昇(著)
ナツメ社
本の詳細
傾聴の基本を学び、
共感力と傾聴スキルを磨くための本。
話を聞くことぐらいできていると、
誰もが思っています。
それは、毎日ちゃんと人と会話をしているからです。普段は、相手の話を聞き、
自分が言いたいことをきちんと伝えられています。では、なぜ今さら
傾聴なんてことに注目する必要があるでしょう?
私たちは普段の会話では
話し手の声を聞き、
伝えたいことの内容を理解しています。話し手「今日は雨ね」
聴き手「うん」という具合。これで十分ですよね
でも、時には十分でないこともあります。
話し手が「今日は雨ね」と言ったのは、
単に天候を叙述しているだけでしょうか。ひょっとしたら、
これから出かけるのがおっくうだということを
伝えたいのかもしれません。だったらそれを理解して返すといいですよね。
話し手「今日は雨ね」(おっくうそうな表情と声の感じ)
聴き手「出かけるのがおっくうよね」
話し手「そうなのよ。荷物も重いのに、いやだわ…..」
でもひょっとしたら、
最近買ったオシャレな傘を
やっと使えるから
うれしいのかもしれません。話し手「今日は雨ね」(明るい表情と声の感じ)
聴き手「うれしそうだね」
話し手「うん、やっとあのキレイな傘をもっていけるわ♪」このように、会話によって自分の気持ちが相手に伝わると、
親近感が湧いてきます。
「聞く」とは、単に
耳から入ってきた話し手の言葉を
とらえているだけのことです。これに対し、
話の内容だけでなく、
話し手が伝えたい気持ちにも心を傾けるのが
「聴く」ということです。
「傾聴」には理論と技術が必要。
と著者は語ります。
人とかかわる職業に就いている方は、
「傾聴」の大切さを痛感しています。
本書は、傾聴の技法とともに
「人間の心の成り立ち」や
「傾聴を妨げる心の動き」について
わかりやすく解説しています。
職場、コーチング、コンサルテーション、
看護、介護、福祉、教育などの
現場で役立つスキル。
「聴き手」がしてしまいがちな
悪い応答例と良い応答例を
その理由とともに解説しています。
目次
はじめに
第1章 傾聴のデキる人は信頼される
信頼されるのは、話し上手よりも聴き上手
◆みんな人から好かれたい
◆聴き上手は人から好かれる
傾聴は人間関係を育てる
◆援助する仕事における心の作用
◆傾聴は援助の力を強化する
心を聴く、心で聴く
◆「聞く」は言葉のやりとり
◆「聴く」は心のやりとり
傾聴は家庭円満の秘訣
◆夫婦間に生まれやすい心の溝
◆何かをしていては、話を聴いたことにならない
傾聴はクレーム対応にも力を発揮する
◆悪気がなくても売り言葉
◆怒りの下には別の感情がある
勝ち負けにこだわると、聴けない
◆話を聴くと、負けたと感じる
◆話の流れを邪魔しない
傾聴されると、プラス思考が湧いてくる
◆傾聴による変化は、連鎖しながら少しずつ起きる
◆小さな心の変化が、人生を前向きにする
[傾聴 Q&A] 傾聴から得られるプラスαのメリット
第2章 人間の心のなりたち
衝動が人を動かす
◆みんなが心の中にもつ衝動
◆衝動が追い求めるもの
自己実現を求める衝動は
人を感動させる
◆自己実現を求める衝動は目で見ることができる
◆自己実現を求める衝動を目にすると心が揺さぶられる
いのちの本質は自己実現を
求める衝動にある
◆意味を求める衝動
◆人の幸せを願う気持ち
◆創造を求める衝動
リスクがなければ達成感は
味わえない
◆見過ごされる成功体験
◆喜びが感じられる成功体験
失敗を避けつづけるのが
最大の失敗
◆チャレンジしなければ失敗はない
◆失敗しない人生が幸せとはかぎらない
無気力な子どもは自尊感情が低い
◆自分を大切にできない子どもは他人を大切にできない
◆いじめは自尊感情を低下させる
過保護な親は自尊感情が低い
◆過保護は自信を奪い取る
◆親の心の傷が子どもの成長の芽を摘み取る
親の子育ての態度と、子どもの心
◆親の反応を子どもは敏感に感じ取る
◆言葉は通じなくても心は通じる
自己実現の衝動は、人生を
エキサイティングなものにする
◆娯楽は退屈な日々を紛らわす
◆自己実現を求めてこそ人生に意味が感じられる
無条件の愛が子どもを成長させる
◆人の心は、無条件の愛を激しく求める
◆完璧が無理でも、無条件に愛を注ごう
無条件に愛してもらえないと、
激しい憎悪が生まれる
◆親を殺す子どもの心理
◆依存心と独立心とのゆらぎが心の中の葛藤を生む
子どもの心の傷は
二パターンの表れ方をする
◆悪い子も良い子も親が育てる
◆感情を押し殺すストレスは大きい
大人もみんな無条件の愛を
求めている
◆無条件の愛が心をつなぐ
◆人は無条件の愛への衝動に反する行動をとる
表現を求める衝動が
自分らしさをつくりあげる
◆おしゃべりは手軽な自己表現
◆表現することは楽しい
変わりたくない衝動は
過去の傷が起こさせる
◆自己実現は誰かを負かすことではない
◆危険を感じると、無意識に衝動を抑えつける
幸せな人は、変化を怖れない
◆不幸な人は不幸な生活にしがみつく
◆防衛本能が変化の邪魔をする
必要以上に固執するのは
変化を怖れる衝動の表れ
◆やってみれば、良さを実感できることもある
◆こだわる心の裏側には、自己無価値感がある
自分を認められない人は、
他者からの承認を過剰に求める
◆承認欲求は挑戦への動機づけ
◆強すぎる承認欲求は変化を拒む
変わりたいVS変わりたくないという
相反する衝動の戦い
◆私たちは自己の可能性を開花させることを欲している
◆成長の喜びは、変化への恐怖を乗り越えたところにある
傾聴は、無条件の愛と
表現を求める衝動を満たす
◆適切な環境を与えれば、いのちも心も自然に育つ
◆傾聴はいのちの力を活性化する
[傾聴 Q&A] 自己実現を求める衝動は、本当に
すべての人に備わっているのか!?
第3章 傾聴の基本態度を身につける
話しても黙しても聴く
◆沈黙も話し手のありのままの姿
◆空白の時間は落ち着かない
興味をもって聴く
◆しゃべらない人が聴き上手なわけではない
◆心の壁を取り払い、ラクな気持ちで積極的に
耳を傾ける
共感をもって聴く
◆ひしひしありありと想像しながら聴く
◆感情は自然に生まれる
話し手の経験を理解する
◆経験はなくても、共感はできる
◆同じ体験をしても、感じ方は人それぞれ
◆想像力を磨くと、共感力が磨かれる
決めつけてはいけない
◆感情には色や濃淡がある
◆人は同時に矛盾した感情をもつ
自分の意見は横に置く
◆賛成か反対かではなく、その結論に至った心理を探る
◆ホンネに迫るアプローチ
ラベルを貼らない
◆話し手について貼るラベル
◆主観的なラベルは、共感的理解を妨げる
あれこれ詮索しない
◆理解しようとすると詮索したくなる
◆事情聴取では、問題は解決しない
自分の話はしない
◆自分のことを話しても”つながり感”は生まれない
◆解決策を教えても、苦しみは解消しない
話せない気持ちを受け止める
◆「何でも話して」はプレッシャー
◆つらすぎる体験は抽象的になりやすい
無理に表現させようしない
◆話してラクになるとはかぎらない
◆傾聴が危機的状況から救い出す
話し手を受け入れる
◆わかってくれる人には話したい
◆不信感には抵抗しない
辛抱強く、成長を待つ
◆相手のペースを尊重する
◆成長の力を信用する
[傾聴 Q&A] 叱りたいときはどうすればいい?
第4章 傾聴の実践テクニック
姿勢で伝える
◆関心があることを体で示す
◆視線は相手に向けても、目は見つめない
大きくうなずく
◆うなずきが伝えるメッセージ
◆うなずいてもらえると、ずっと話しやすくなる
◆電話で話を聴くときこそ、あいづちが大切
感情に飲み込まれてはいけない
◆共感と同感は違う
◆共感と同情は違う
キーワードを繰り返す
◆話をうながすパワフルなメッセージ
◆オウム返しでは意味がない
受け答えは短く
◆受け答えが長いと、話し手は話しづらい
◆話の要点がつかめないと、話が長くなる
感情にフタをしているサインを
見つける
◆話の内容に合わない感情表現
◆脈絡のない話はホンネではない
正論を振りかざさない
◆正論が気持ちを疎外する
◆クレーム対応には、心理面のケアが大事
質問の意味を考える
◆質問の答えは求めていない
◆質問したくなる心の動き
質問の裏側にある気持ちを理解する
◆質問に表現されている気持ち
◆言葉にできない気持ちを理解していることを伝える
感情を受け止める
◆会話には二つの機能がある
◆話の内容によって受け答えの仕方が変わる
◆共有世界を構築する受け答え
相手の感情の強さに合わせる
◆感情の強さに共鳴する
◆感情がわからないときは
当たり障りなく答える
話の流れに沿って質問する
◆軽い会話は、質問をはさむと勢いがつく
◆深刻な話題のときは、質問は減らす
繰り返される話も
初めてのように聴く
◆同じ話をする人に「その話は聞いた」は禁句
◆同じ話を聴いているうちに、信頼が深まる
リラックスして聴く
◆緊張感が伝わると、打ち解けた話はできない
◆体をリラックスさせる呼吸法
緊張していることに気づく
◆私たちは緊張の火種に囲まれている
◆緊張は知らないうちに許容範囲を超えてしまう
話を聴く時間の長さを区切る
◆カウンセリングは、決められた時間の枠内で行う
◆話し合いの中でルールを決める
秘密を守る
◆秘密を守るのは難しい
◆秘密を話したくなる心の動き
テクニックに頼らない
◆教え方の上手な教師が、良い教師とはかぎらない
◆傾聴の本質は寄り添う心にある
◆聴き手は自分を偽らない
心がゆるむと話したくなる
◆心も体も緊張をほぐすと元気になる
◆わかってもらえると、もっと話したくなる
[傾聴 Q&A] 大きな問題に直面したら……
第5章 傾聴を妨げる心の動き
さまざまな心の防衛機制 [1]
防衛機制の代表格「抑圧」
◆心は自らを守るために心をコントロールする
◆「抑圧」は、くさいものにフタをしようとする心の働き
さまざまな心の防衛機制 [2]
逃避、分離、反動形成
◆「逃避」は消極的に身を守る
◆「分離」は心と体を切り離す
◆「反動形成」は反対の行動で本心をカモフラージュする
さまざまな心の防衛機制 [3]
置き換え、補償、攻撃
◆別のことで満足を得ようとする防衛機制
◆欲求不満を解消する基本的な防衛機制
さまざまな心の防衛機制 [4]
知性化、昇華、合理化
◆道徳観に反する感情を認めてもらおうとする防衛機制
◆正当化して不安な気持ちを軽減させる防衛機制
さまざまな心の防衛機制 [5]
同一視、投影
◆自分と他人の感情を混同する防衛機制
◆投影性同一視の対象は自分の姿
過去から現在へ心が転移する
◆過去に抱いた気持ちを、目の前にいる人に抱く
◆転移により起こる作用
聴き手の心の傷が傾聴を妨げる
◆心の傷は共鳴し合う
◆アップアップしている人に他人の援助はできない
自分を救うための救世主願望
◆治そうとするのは逆効果
◆満たされない思いを満たすための救世主願望
“あるべき姿”から心を解き放つ
◆理想と現実は表裏一体
◆縛りから解放されると、自分らしくなれる
[傾聴 Q&A] いい仕事をするコンディション
を整えるには、どうすればよいですか?
第6章 傾聴の紙上レッスン
人見知りだと言って、話そうとしない人の話を聴く
文句を並べ立てる人の話を聴く
一人でしゃべりまくる人の話を聴く
自分勝手な人の話を聴く
病気でもないのに、病気を苦にする人の話を聴く
泣きだしてしまった人の話を聴く
不登校の高校生の話を聴く
堂々巡りしてしまう話を聴く
[傾聴 Q&A] 傾聴力を高めるには、どうすればいいの?
引用・参考文献
索引
古宮 昇(著)
ナツメ社