坂本 雅志(著)
日本実業出版社
本の詳細
たとえば、あるビジネスマンが、いつも同じCVSで、朝食や新聞・雑誌などを購入しているとします。そのCVSにとって、このビジネスマンのシェアは100%ということになります。
この顧客内シェアを広げることがCRMです。
したがって、顧客の購入金額と来店ごとの購入単位を分析し、それらを向上させるように、顧客の信頼を勝ち取るような対策を打つことが必要になります。
※ CVS = コンビニエンスストア
もしかするとこのビジネスマンは、単に自宅か勤務先に近いという理由で、そのCVSに通っているかもしれません。
CRM的発想に立てば、毎日来てくれる顧客に、常に新しい発見や驚きをCVSで体験してもらいところです。そのうえで、そのCVSのファンになってもらえば、多くの顧客を呼び込む口コミ効果が期待できるかもしれません。
もちろん、顧客をファン化することは簡単ではありません。
しかし、通りすがりに立ち寄る顧客を待っているのではなく、いつも通ってくれる顧客に対して、より多く、より高額な商品を購入してもらうために工夫することはあります。
Aさんが、あるブランド『α』の表参道店で約2万円分の商品を購入し、別の日に新宿店で約5万円分の商品を購入、また別の日にオンライン店で約3万円分の商品を購入しました。
しかし、αの各店舗でカスタマーカードが記入されているので、Aさんは、それぞれ別の人格として捉えられていました。
このαというブランドでは、年間で10万円以上購入した顧客はVIPと認定し、さまざまな優遇措置をとっていますが、AさんはVIPの認定を受けておらず、一般顧客として扱われていました。
こうした事態は、多くのブランド企業で起きています。あるべき姿としては、ブランド『α』としてAさんに向き合うことです。
GoogleやAmazonなどが一番重視しているのがCRM。
誰でも知っている有名企業はCRMを実践しています。
CRMはCustomer Relationship Managementの略で
顧客関係管理の意味。
本書ではCRMを「企業と顧客の長期的かつ
良好な関係を構築する手法・戦略」と定義づけています。
具体的な例を挙げるとポイントカードや会員プログラム、
Amazonのレコメンド機能やGoogleの行動ターゲティング広告、
携帯電話会社の割引施策などが「CRM」。
その範囲は多岐にわたります。
本書では戦略としてのCRMの捉え方から、
顧客識別のプロセス、顧客分析の手法(デシル分析・RFM分析)、
顧客との関係性構築、優良顧客への差別化対応、
顧客データの収集・管理・活用までを
最新の実例とともに基本から説明。
CRMの必須知識を1冊に凝縮し、
直近の動向やトレンドを踏まえ、
CRM導入のポイントを解説しています。
企業経営者、コールセンター担当者は読んでおきたい1冊です。
目次
第1章 なぜ、いまCRMなのか?
1-1 誰でも知っているあの有名企業は、CRM戦略を重要視している
1-2 高級ブランド企業ですらもはやCRM戦略の時代
1-3 そもそも、CRMとは何か?
1-4 ICT(情報通信技術)の進展で高まるCRMの重要性
1-5 ソーシャルメディアの普及で起きているパラダイムシフト
第2章 CRM戦略を実践する前に知っておくべきこと
2-1 戦略としてCRMを考える
2-2 CRM戦略の全体像
2-3 CRMの導入にあたり課題になること
2-4 御社はCRMに向いている? 向いていない?
2-5 消費財メーカーにとってのCRMの必要要件
2-6 CRMを導入する際に決めておくべきこと
2-7 CRMの取り組みを分析・評価する視点
第3章 顧客を識別し、優良顧客を明確化する
3-1 「顧客」とはいったい誰なのか?
3-2 顧客識別のプロセスを確認する
3-3 顧客の識別から優良顧客の明確化へ
3-4 自社にとっての優良顧客とは?
3-5 顧客構造をつかむための代表的な分析手法
3-6 顧客分析の手法(1)デシル分析
3-7 顧客分析の手法(2)デシル移動分析
3-8 顧客分析の手法(3)顧客離反率分析
3-9 顧客分析の手法(4)RFM分析
3-10 事例(ソシエ・ワールド)に見るRFMを活用した優良顧客の識別
3-11 高級ブランド企業のVIPプログラム
3-12 優良顧客を導き出す企業独自の評価指標
3-13 優良顧客を見つける方法
第4章 顧客接点を持ち、顧客を維持・育成する
4-1 顧客リレーションなくして顧客満足はあり得ない
4-2 顧客接点とはいったいどんなものか?
4-3 企業と顧客を直接つなぐO2O(Online to Offline)
4-4 消費者購買行動モデルから顧客接点を設計する
4-5 顧客との親密な関係性を築く方法
4-6 優良顧客を育てる顧客接点の管理
4-7 一生涯の顧客を獲得するために
4-8 顧客を維持・育成するために必要なこと
4-9 優先すべき優良顧客への対応策
4-10 優良顧客への差別化対応の事例
4-11 顧客参加型の商品開発
4-12 CRMの事例(1)再春館製薬所
4-13 CRMの事例(2)ザ・リッツ・カールトン
第5章 顧客データの収集・管理から分析・活用まで
5-1 収集すべき顧客データの種類
5-2 ソーシャルリスニングは顧客データの宝庫
5-3 顧客データを管理するうえで重要なポイント
5-4 個人情報の取り扱いはどうすればいい?
5-5 データ分析と活用のイメージ
5-6 データ分析と活用のプロセス
5-7 データ分析の方法と実例
5-8 CRMの事例(3)集英社『FLAG SHOP』
5-9 CRMの事例(4)松屋銀座『ジ・オフィス』
5-10 CRMの事例(5)日本マクドナルド
5-11 CRMの事例(6)『Tポイント』と『Ponta』
第6章 これからのCRM戦略
6-1 ソーシャルメディアからソーシャルCRM
6-2 ソーシャルCRMの可能性と課題
6-3 企業内CRMデータとソーシャルCRMデータの融合
6-4 ビッグデータ時代のCRM
6-5 ビッグデータでCRMを深化させる
6-6 「データ駆動型組織」への移行が始まる
6-7 ビッグデータの活用はどこまで進んでいるか?
索引
参考文献
坂本 雅志(著)
日本実業出版社