一條 和生(著)
東洋経済新報社
本の詳細
ここで重要なのが、自己評価と周囲の評価とのギャップ分析をすることです。1つの例をお話ししましょう。コミュニケーションについて、私は十分に行っていると思っていました。社員と会社のことについて忌憚なく話し合うラウンドテーブル・ミーティングも行い、ブログも書き、社内報を出し、新聞やテレビに出て、同じメッセージを発信し続けている。そうした自負がありました。
ところが、周囲の評価では、コミュニケーションが全然足りないというのです。なぜ周囲がそう捉えているかを調べていくと、私が話すことが不足しているのではなく、相手の言うことを聞くことが足りないと周囲は感じていることがわかってきました。コミュニケーションは双方向的ですから、周囲は自分の話をもっと聞いてくれと訴えていたのです。さらに深く分析すると、ただ漠然と聞くのではなく、関心を持って、途中で遮ることなく最後まで聞き、納得したうえで話してほしいと思っていることもわかりました。
リーダーシップは終着駅のないジャーニーです。リーダーは常に学び続け、より高いところをめざして成長を続けなくてはいけません。ウェルチも「自分に学ぶ気持ちがなくなったとき、自分を成長させようと思わなくなったときが、やはり身を引くときだ」と言っていました。自分はこうだと自己を確立させてしまった瞬間に、学ぶ気持ちがなくなり、成長する力が失われます。そして、本を書き始めて、人生が終わってしまうのです。他の人が私のことを書くのはいいのですが、私自身が本を書き出したら、そこで私のリーダーシップ・ジャーニーは終わりなのだろうと思っています。
目次
はじめに
藤森義明 – リーダーシップ・ジャーニーに終わりはない
- 留学して自分の小ささに気づいた
- ウェルチに認められてリーダーシップ研修に参加
- GEバリューの理解
- ロールモデル化とストレッチ
- フィードバックのプロセスで自分を高める
- 日本企業でも変革できることを証明したい
- CEOコーチングとギャップ分析
- リーダーを輩出するプロセスを作れ
澤田道隆 – 誰にでも無限の可能性がある
- 性能で勝負する世界で鍛えられた
- 絶対に失敗できないプロジェクト
- バックグラウンドの違う人材を活かす
- 原点回帰で「メリーズ」を蘇らせる
- 全員面談で個人の力を引き出す
- 既存の資産に光を当ててヒット製品へ
- 可能性を伸ばす場を与え、個の力を組織化する
- 人の可能性を最大化させるリーダーをめざして
松本晃 – できるだけシンプルに考え、実行する
- 39歳で経営の経験を積む
- サラリーマン人生の節目は15年ごと
- 経営の倫理観を重視する
- 経営の数字について
- 経営者の視点は20、50、30
- 60歳からは世のため、人のため
- カルビーの会長に就任
- リーダーシップの定義は3つ
玉塚元一 – 経験しないとわからない世界がある
- シンガポールで商売の面白さを実感
- 経営者観が180度変わった留学時代
- 経営現場に身を置くために転職を決意
- 強烈な浮き沈みを味わったユニクロ時代
- 商売は顧客がすべてである
- リヴァンプでの新たな挑戦
- ローソンでの再挑戦
- 体当たりで突き当たっていけば、決定的瞬間が訪れる
- 経験してこそ見えてくる世界がある
志賀俊之 – ロールモデルに学び、自分流にアレンジする
- 海外から見えていた日本企業の限界
- カルロス・ゴーンのスピーチに魅了される
- 強烈なリーダーシップを目の当たりに
- 勉強したことは無駄にならない
- めざすのは西洋と日本の中間モデル
- 共感の経営の原点
- コンピテンシーを学ぶ大切さ
- 取り残された現場にも配慮する
- 決して後戻りさせない
永野毅 – 全員で「良い会社“Good Company”」を創る
- 商売の原点を生んだ新人時代
- チームワークの大切さを知った米国時代
- 「超保険」プロジェクトリーダーに抜擢
- 代理店さんの協力の輪が支えに
- 成功するまで諦めない
- 部下の力を認め、活用することがリーダーの仕事だ
- 高い志や思いがないと、長続きする結果は出ない
- 次の100年に向けて
佐藤玖美 – 恐れることなく変わり続ける
- 27歳で社長業に飛び込む
- ヘルスケア業界特化への戦略転換
- リーダーはオールマイティでなくてもいい
- 知の伝承のためにオリジナル・コンセプトを開発
- 東日本大震災での意思決定
- リスクを恐れずに、プロアクティブに行動する
- 人の役に立つことがエネルギーの源泉になる
前田新造 – 一瞬も一生も美しく、をめざして
- 原点は大阪の新人時代にある
- 平和な仕事をしたかったので資生堂に
- 新ブランドの立ち上げ
- 挫折と改革への挑戦
- 国際部で女性活用と多様性に開眼
- BC歩合制の撤廃というボトムからの改革
- ブランドと人材育成というトップからの改革
- 取締役会を活性化させる
- 自分なりのリーダーシップ
樋口泰行 – 新しい場で学び続ける
- 組織間をつなぐ機動力を養った松下時代
- MBAでマネジメントの知識や戦略的志向を習得
- 日本HPの社長として合併後の統合を推進
- ダイエーではモチベーション向上策に心血注ぐ
- タコツボ的な体質との闘い
- 経営哲学の大切さ
- 日本マイクロソフトで新たな変革に挑む
- リーダーの条件
松井忠三 – 常に全力を尽くしながら視座を高める
- 仕事の基本は人間関係にある
- 意識改革は先行しない
- ビジネスの本質をつかむ大切さ
- 片道切符の出向・転籍
- 物流や新規事業を経験する
- 風土改革と仕組み化によってV字回復へ
- リーダーシップに求められるもの
- グローバル企業に求められるリーダーシップ
新貝康司 – ストレッチ経験で己を鍛え、実践知を蓄える
- 前例がないから、やってみよう
- 成果は、人を通じてしか出せない
- 技術開発にマーケティング発想を持ち込む
- 買収プロジェクトに抜擢
- 好奇心と危機感に誘われてアメリカへ
- 提供を通じてハードスキルを習得
- 意思決定は先延ばしにしてはいけない
- 統合時に役立ったソフトスキル
- プロダクティブ・テンションとストレッチ経験が大切
小林いずみ – ストーリーで多様な人々を束ねる
- 自分の仕事を超えて物事を見る
- 仕事を通じて世界が広がった
- 突然の社長拝命
- リストラと組織再建に挑む
- 周到なサクセッション・プランと支援体制が敷かれていた
- 仕事も文化もまるで異なる国際機関
- 多様な価値観を持った人々をまとめるコツ
- 求められているのは質問力と全体観
一條 和生(著)
東洋経済新報社