荒川詔四 (著)
ダイヤモンド社
本の詳細
想像してください。業績の悪化している会社で「お前が悪い」と部下を責め続ける社長がいたらどう思うでしょうか? 誰もが唾棄すべき存在だと思うはずです。
もちろん、部下にも生活がありますから、露骨な反発は避けて、社長の叱責に耐えるでしょう。そして、社長の指示に従って何らかの行動を起こすでしょう。
優れたリーダーはみな小心者である。/荒川詔四 (著) ダイヤモンド社より
しかし、こんなものはリーダーシップでも何でもない。その部下の行動は、ただただ叱責を避けるためのものにすぎず、そこには自発的な意思のかけらもありません。そのような形だけの行動がよい結果に結びつくことなどありえないのです。
社長本人は、部下を動かしてリーダーシップを発揮していると勘違いするかもしれませんが、実際には、それぞれの意思と知恵を持った個々人の集合体である組織を”烏合の衆”化し、機能不全に陥らせているにすぎないのです。
ときどき、業績悪化の要因として「社会変化についていけなかった」という言い訳をする社長を見かけますが、これもリーダー失格と言わざるを得ません。あらゆる社会変化は、もとをたどれば一個人の行動に突き当たります。であれば、リーダーたるもの、「自分こそが社会変化を起こす」という創造的発想をもたねばならないはず。にもかかわらず、「社会変化についていけなかった」などと”犠牲者”ぶっているようでは、誰もリーダーとは思わないでしょう。
いわば、彼らは”偽物のリーダー”なのです。
なぜ、そうなるのか?
簡単なことです。彼らが逃げているからです。
だから、「誰か」を指導するなどと不遜な考えを持つ前に、「自分の課題から逃げない」という「心の持ち方」を徹底することが重要。目の前に困難が立ちはだかったときに、誰かのせいにしたり、環境のせいにするのではなく、自分の力でなんとかしようとする意思をもつ。この「心の持ち方」こそが、リーダーシップの根っこなのです。
そして、目の前の困難を乗り越えるために、知恵を絞り、率先して行動する姿に、周囲の人々が共感を寄せて、「力になってやろう」「協力しよう」と思ってもらえたときに、はじめてリーダーシップは生まれる。少々不器用であっても、小心者であっても、その人なりの「持ち味」を活かしながら、必ずリーダーシップを発揮できるようになるのです。
目次
はじめに
- 一流のリーダーは、「繊細さ」を持ち合わせている
- 「繊細さ」を束ねて「強靭なリーダー」になる
- 入社2年目に学んだリーダーの基本
- 世界中でリーダーシップの基本は変わらない
- 「小心者」でなければ生き残れない
- リーダーシップこそ人生を楽しむ秘訣
第1章 「小心な楽観主義者」が最強である
1 誰かを「指導」するなどという不遜な考えを捨てる。
- 「指導」する前に、絶対に押えておくべきこと
- なぜ”偽物のリーダー”が生まれるのか?
- 「逃げ道」のない場所で人間は鍛えられる
- リーダーシップの「ある人」と「ない人」の2種類しかいない
2 「小心な楽観主義者」こそが、最強のリーダーである。
- トラブルが起きているからこそ、「仕事は順調だ」と考える
- なぜ、「繊細な人」ほどトラブルに強いのか?
- 「誠実」であれば必ずトラブルは解決する
- 「信頼関係」がギフトをもたらしてくれる
- 「小心な楽観主義者」こそリーダーにふさわしい
3 仕事の「所有権」を決して手放してはいけない。
- 組織人であるために、「自分の意思」を捨てる愚
- オーナーシップを捨てれば、「子どもの使い」でしかない
- オーナーシップを発揮して「主導権」を握る
- 「面倒見のいい上司」は、必ずしも「よい上司」ではない
4 「面白いこと」をするから、リーダーシップは育つ。
- 「苦行」をやり抜いても、リーダーシップは磨かれない
- 沈滞するチームの士気を一気に上げた方法とは?
- この世の中に「完成された仕事」はない
- 仕事を面白くするのは、驚くほど簡単である
5 「言い出しっぺ」でなければ意味がない。
- 「すでにある仕組み」に乗っかるだけではつまらない
- 成功しようが失敗しようが、やり切りさえすればいい
- 「心無い言葉」に、感情的になってはいけない
- 「手の平返し」をされたら、味方が増えたと思えばいい
- 「しょうがないヤツ……」というレッテルを貼られたら勝ち
- 上司から「100%の納得」を勝ち取ろうとするな
- 「重要な提案」をするときは、ひとりでトップに会いに行く
第2章 「臆病者」しか生き残れない
6 「人格者」をめざすな。
- 「人格者」ぶってみたところで、周囲には”馬脚”は丸見え
- 部下を責め立てるのは「合目的的」ではない
- 「報告」とは、「トラブルを報告すること」である
- 「合目的的」であることに徹すれば、リーダーシップは生まれる
7 「自尊心」を傷つけることほど愚かなことはない。
- 「敵意」がリーダーシップを根っこから殺す
- 相手に「敬意」を伝えるのが、すべての出発点
- 「学べるのは他者からだけ」という自覚を常に忘れない
8 優れたリーダーは「傾聴」する。
- 「優れたリーダー」か否か、会議室に入った瞬間にわかる
- 「答えがわからない」という臆病さをもつ
- 「英語」が自由闊達な議論を殺す!?
- 「誰もが発言しやすい環境を整える」のがリーダーの役割である
9 「格好いい言葉」を使ってはならない。
- コミュニケーションとは、「伝える」ことではない
- 「短い言葉」で、メンバーの頭に刻み付ける
- 危機的な状況においては、「択一」を明確に打ち出す
- 「当たり前」のことを繰り返し語り続ける
- リーダーは、“格好いい言葉”を吐くな
10 「原理原則」を死守する。
- 「原理原則」から外れたときに、すべてが崩れる
- 「中途半端な小心者」が大きな過ちを犯す
- 「安全第一」というならば、絶対に「安全」を最優先にする
- 「原理原則」は万能の判断基準である
11 「臆病さ」を笑う者は必ず失敗する。
- リーダーにとって、「臆病さ」は美徳である
- 「目先の利益」よりも、「実力」を養うことを優先する
- 強いライバルが現れたら、 「戦う土俵」を変える
- 好業績のときこそ、「臆病」でいなければならない
第3章 「心配性」だから強くなる
12 リーダーは「1円」も稼いでいない。
- 現場に「OKY」と思われたら、リーダーは失格である
- 「やってみせる」ことなくして、リーダーシップは発揮できない
- 現場には現場の「やむを得ない事情」がある
13 「現場」を知らない者は決断できない。
- 「3現」を体感すれば、解決策は自然と導き出される
- 「権限委譲」を「責任逃れ」の言い訳にするな
- 「現場に精通している」と認識されれば、信頼関係が生まれる
- 「不安」で仕方がないから、「現場」に足を運ぶ
- 優れたリーダーは、「不安感」を味方につけている
14 「理路整然」としたリポートを疑え。
- 現場というものは、複雑怪奇な「生き物」である
- 「ストーリー」に添ってリポートはつくられる
- 現場と「複雑な問題」を共有するのが第一歩
- 地べたを這いずって、現場に対する「畏れ」をもて
15 「大河の流れ」のように考える。
- 優れたリーダーは、なぜ「大胆な決断」ができるのか?
- “食うか食われるか”の危機感をもつ
- 「強烈な危機感」こそが、本物の思考力を生み出す
- 優れたリーダーは、「大河の流れ」のように考える
- 考え続けるから、「一瞬の判断」ができる
16 心配性だから「先見の明」が育つ。
- リーダーの仕事は「365日24時間」である
- 「カバン持ち」が、最高のリーダー教育である
- 優れたリーダーは、常に「先回り」している
- 「先回り」するから、主導権を握ることができる
- 「これ以上、心配しようがない」と思えるまで考え抜く
第4章 「組織の力学」に敏感であれ
17 地位は「ダメな人」をつくる。
- 「地位は人をつくる」のではなく、「ダメな人」をつくる
- なぜ、リーダーは必然的に「裸の王様」になるのか?
- 「心地よさ」に酔っていると、恥ずかしい存在になる
- 組織における出世など、”いい加減”なものである
18 「負のメカニズム」を知り尽くす。
- 組織のメカニズムには、「負の作用」が伴う
- 社長に上がってくる提案は、すべて「妥協の産物」である
- リーダーにしか「革命」は起こせない
19 「部下の痛み」に敏感であれ。
- 優れたリーダーは、絶対的な「厳しさ」をもつ
- リーダーは「意思」を貫徹しなければならない
- リーダーは「厳しさ」をはき違えてはならない
- 自分が感じた「痛み」を次世代に引き継ぐな
- 「痛み」を伴う経験で人間は成長する
20 戦略的な「ケチ」であれ。
- 「気前がいいリーダー」は、組織を弱体化する
- 「ローコスト・オペレーション」は、組織を亡ぼす
- 数字は「絞り出すもの」ではなく、「創り出すもの」である
- 「リーン&ストラテジック」こそが、リーダーの鉄則である
21 「権力」はできるだけ隠す。
- 権力という「刀」を、隠すことに細心の注意を払う
- 「権力」ではなく「実力」でリーダーシップを示す
- 相手をリスペクトしつつ、ピリッと「権力」を効かせる
- 「権力の行使」は、冷静かつ断固として行う
第5章 すべては「理想」から始まる
22 臆病な「理想主義者」であれ。
- リーダーシップに、「年齢」も「職位」も関係ない
- 「鈍感な理想主義者」は、必ず現実に敗北する
- 「理想」へ向かう歯車が、自然と回り始める理由とは?
23 リーダーは「芸術家」であれ。
- 問題解決だけでは、「真のリーダー」にはなれない
- 優れたリーダーは、「絵描き」に似ている
- リーダーは「コンセプト」をがっちりと握り続ける
24 「目先の危機」ではなく、「危機の先」を見つめる。
- 「リーダーシップの本質」は世界不変である
- 「機能する計画」をつくるシンプルな鉄則
- 「リーダーシップ」とはきわめて脆いものである
- 14万人の社員と「あるべき姿」を共有する
- 「目先の危機」ではなく、「危機の先」に目を凝らす
- 「計画」は変化に即応するためにある
25 次世代に「美田」を残す。
- 優れたリーダーは、「何もしていない」ように見える
- 自分という存在は、「大河の一滴」にすぎない
- 自分が“汚名”をかぶっても、やらなければならないこと
- 「リーダーの評価」は、その座を去ってから定まる
- あとがき