濱潟好古(著)
幻冬舎
本の詳細
一般大学は文部科学省の所轄だが、防衛大は防衛省の所轄となる。身分も学生ではなく特別職国家公務員だ。一般大学同様の教育課程以外に訓練過程がある。
各学年全員が同じ訓練を行う「共通訓練」と、2学年において陸上・海上・航空要因に区分された後に行う「専門訓練」がある。
一般大学との大きな違いは、そのキャンパスライフにある。
まず、防衛大は完全全寮制だ。土日以外は外出できない。校内では指定された制服、作業服を着て過ごす。外出時の服装は制服であり、外出前には制服の服装点検がある。その点検に合格しなければ外出することはできない。
打ち合わせが終わり、その部下からの着信に折り返し連絡したところ、その部下は「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」と私に謝ってきた。
一刻の猶予も許されないし、そもそも1年目の部下だ。彼にクレーム対応はできないと思った。そこで、自分自身のタスクはいったん後回しにし、「今すぐ一緒に謝罪に行く」と一言だけ告げた。
一緒にお客さまのところへ行き、クレームの理由、事の背景を伺い、心からの謝罪とトラブルの対処についてできる限りの話をした。途中、「御社の社員教育はどうなっているのですか?」と厳しいお言葉もいただいたが、それに対しても一切言い訳はしなかった。
言い訳をするとどうなるかは、防衛大で痛いほど経験したことだ。
そもそも言い訳をしたところで、トラブルは解決しない。
だが、そういったときこそ「保身に走るな」を肝に銘じたい。部下のことなら猶更(なおさら)だ。自分のことはさておき、部下が困っていれば、それには全力で対応する必要がある。
自己保身に走れば、その瞬間には自分自身は守れても、長期的に、かつトータルで見れば、信頼は必ず失われる。
目次
- はじめに
1 信頼力 自己保身は最弱のリーダーをつくる
01 ウソをつくな、言い訳するな、仲間を売るな
- 自己保身しないリーダーの3条件
- 防衛大の3大ルールは信頼の基本
- 容儀点検で試された「仲間を売るな!」
- 自己保身しないことで信頼を得る
02 戦場だったら全員死んでるぞ
- 誤った指示を出したらみんな死ぬ
- 「パレード訓練」で試された統制力
- リーダーは的確な指示を出し、落ちこぼれをつくらない
03 否定するな
- 魅力あるリーダーは部下を否定しない
- ドラゴン部屋長の教え
- 自己否定は百害あって一利なし
- 感情を読み取り、状況は客観的に把握する
04 部下を見捨てるな
- 目の前の部下の教育を怠るな
- 部下のやる気は数値化しろ
- 強いチームも目の前の部下の教育から
05 背中で見せろ
- やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ
- 下級生に教えられたリーダーの姿
- 「ダメっ子」を「デキっ子」に変えたリーダーの背中
06 ダメな上司は最高の教材
- 最悪なリーダーから学ぶことは多い
- 理不尽な環境下でできること
- 「生きる教材」に学ぶ
- Column
2 原則力 ビジョンが生んだルールは強い
07 明確なビジョンを持て
- チームのビジョンと個人のビジョンが一致したとき、チームの成果は劇的に上がる
- 個人のビジョンをはっきりさせる
- 誰でも個人のビジョンをチームのビジョンと相乗させることはできる
- このチームを通してどうなりたいのか
08 チームの「在り方」を決めろ
- 環境や土壌が良いところで野菜はよく育つ
- 「在り方」は「目的・ミッション」、「やり方」は「手段」
- 「在り方」を決めると目標へ向かう力は無限大
- 全ての部下が納得する「在り方」を決める
09 ルール破りは連帯責任
- 「時間一つ守れない」社員がいれば、「納期一つ守れない」会社になる
- 「鍵付き事故」から学んだ連帯責任
- 部下の責任を背負う覚悟
- ルールを守れないチームは「良質」なチームにはなれない
10 ミスやズレを防ぐルールをつくれ
- 仕事のプロセスでズレは必ず生じる
- アウトプットイメージに差があれば成功に至らない
- 小さな「アウトプット」をプロセスで確認する
- 必ず生じるプロセスのズレを補正していく
11 言行不一致をなくせ
- 「2対6対2の法則」から分かること
- 理不尽な世界だからこそ本性が分かる
- Column
3 評価力 役割への絶対評価がやる気を生む
12 不当な優しさはいらない
- 部下を駄目にする表面的な優しさ
- 部下のご機嫌取りをしても一枚岩にはなれない
- 厳しさも優しさのうち、「絶対評価」でいけ
- 「褒める・叱る」の基準をあいまいにするな
13 一喜一憂ほど怖いものはない
- 成果を語り合えばコミュニケーションは良くなる
- 短艇委員会で学んだコミュニケーション
- 成果を上げるプロセスにこだわればチームは成長できる
14 結果に至るロジックを知れ
- 部下が目標を達成できないのはリーダーの責任だ
- 100%できることを100%やり遂げたか
- 結果に至るロジックを知らずして部下を理解することはできない
15 役割を認識させよ
- 役割分担で最高のパフォーマンスを発揮するのが防衛大流
- 「棒倒し」に学ぶ、何があっても役割を全うするチーム
- 中国人Jさんに見る適材適所と役割貫徹
16 部下の教育こそ最高の投資
- ジョブローテーション制度で誰でも成果を出せるように
- 適材適所が決められないとき
- 教える時間がもったいないと思うな
- Column
4 伝達力 「伝えたか」ではなく「伝わったか」
17 常に挑戦し、常にインプットをはかれ
- 自分は無知と知り、学び続けよ。そして多くを伝えよう
- 現代に求められるリーダーシップ
- 入り口を大きくしてインプットをはかれ
18 伝えたいならリピートせよ
- 主観で理解させるな
- 「伝える」と「伝わる」は違う
- ミスコミュニケーションを防ぐ3つのポイント
- 何でも数値化せよ
19 浮かれたコミュニケーションはするな
- 組織を一枚岩にする本物のコミュニケーション
- 本気でぶつかり合わせろ
- メンバー同士の点を線でつないでコミュニケーション力低下を防ぐ
20 1人欠けても銃は撃てない
- 人は城、人は石垣、人は掘
- 誰一人として無駄にしない
21 最高の姿を共有しろ
- 防衛大「弁食作業」から学ぶ良質なアウトプットの出させ方
- 「弁食作業」の大失敗
- アウトプットイメージを共有せず、納期もあいまいだった
- Column
5 成果力 チームが最高の戦力を発揮する仕組み
22 リーダーは、誰よりも働け
- 人を惹きつけ、動かす力
- 目の前の部下に全力で向き合え
- リーダーは部下からかわいそうだと思われろ
23 何が起きても、やりきれ
- リーダーの義務を果たさず部下に求めるな
- 自分自身に厳しいリーダーが尊敬される
- リーダーはどんなことが起きてもやりきれ
24 1人の人間として部下と向き合え
- 部下との距離を縮める最高の方法
- 部下の行動に全力で対応せよ
- 役職や肩書きにこだわるな
25 生きたマニュアルをつくれ
- 防衛大の「掃除申し送りノート」に学ぶ価値・情報の高め方
- 誰がやっても、リーダーがいなくとも
- 「マニュアル」「情報」の価値を高めていくために日々更新する
26 「機会指導」で戦力化せよ
- 身につくチャンスを無駄にするな
- その場で指導せよ
- Column
6 自動力 部下が自ら動き続ける装置をつくれ
27 3歩以上廊下を歩くな
- 時間は与えられない。どんな環境下でも時間をつくり出せ
- 走ってでも時間をつくれ
- 「足し算」「引き算」で時間を作り出す
28 部下の居場所をつくれ
- 部下1人ひとりの居場所をつくれば‥‥
- ダメっ子の殻を破ってくれたドラゴン部屋長
- 部下の居場所をつくるのはリーダーの役目
29 本物のリーダーは上司も部下も勝たせる
- 上司の力を引き出せ
- リーダーシップとフォロワーシップ
- リーダーの考えや判断、選択がいつも正しいとは限らない
30 新人にはとにかくマネをさせろ
- 最初はマネして、後からオリジナリティを発揮するほうが成長が速い
- 新人はマネることが大事
- 基礎力がない者には応用力はない
- マネだけで最低限のことができる人間はつくれる
31 継続こそが力なり
- リーダーが習慣化すべきたった一つのこと
- なぜ乾布摩擦を毎朝続けるのか
- 「継続してやるべきこと」は習慣化させる
- 周囲を勝たせる仕事をする
- Column
- おわりに