【新版】動機づける力 ― モチベーションの理論と実践

【新版】動機づける力 ― モチベーションの理論と実践

【新版】動機づける力 ― モチベーションの理論と実践

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(著)
ダイヤモンド社

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本の詳細

だれかに何かをさせる、最も簡単かつ確実で、直接的な方法とは何だろうか。それは一言「やってくれたまえ」と言えばよい。しかし「嫌です」と返事をされたら、心理学者に頼んで、なぜ抵抗を示すのか、その理由を探らなければならない。

次は、命令すればよい。しかし「意味がよくわかりません」という返事であれば、コミュニケーション技術の専門家に頼んで、あなたの真意を伝える方法を学ばなければならない。割増金を出してはどうか。しかし、ことさら断るまでもなく、割増金制度の設定と運営が面倒でやっかいなことは、よく知られている。では、手取り足取り教えてはどうか。しかし、研修にはコストがかかる。

もっと簡単な方法はないものだろうか。どこで講演しても聴衆のなかに「直接行動派」のマネジャーが混じっていて、このような人たちは「蹴飛ばすぞ」とどやしつける。この種のマネジャーは間違っていない。だれかに何かをさせる、いちばん確実で、いちばん回りくどくない方法は、尻を蹴飛ばすことである。これを「KITA」(尻を蹴飛ばせ:Kick in the pantsの文字を組み合わせている)と名づける。

しかし、次のような三つの欠点がある。

  1. 野暮である。
  2. 多くの組織が大事にしている温情主義の看板を傷つける。
  3. 肉体的な制裁は自律神経を直接刺激し、しばしば消極的反応を招く(社員も仕返しに尻を蹴飛ばす)。

これらの点から、消極的かつ肉体的KITAはタブー視されるようになった。

モチベーションについて、いま一度考えてみよう。あなたに「これを、私のため、あるいは会社のためにやってくれれば、ボーナスや手当、身分や昇進、このほか会社としてやれることは何でもしてやろう」と言ったとしたら、あなたのモチベーションを高めることになるであろうか。

なぜこのように聴衆であるマネジャーたちが、消極的KITAはモチベーションにならないとすぐに断言し、積極的KITAはモチベーションになると、ほとんど異口同音に主張するのか。

その理由は、消極的KITAが暴力だとすれば、積極的KITAは誘惑だからである。とはいえ、誘惑に負けるほうが暴力を振るわれるよりもずっと不幸である。暴力は不運な事故として済ませられるが、誘惑は自堕落を思い知らせるものだからだ。

それでも積極的KITAは好んで用いられる。これは伝統的な方法であり、アメリカ的な方法でもある。組織はあなたを蹴飛ばさなくても済む。あなた自身が自分を蹴飛ばすのである。

なぜKITAはモチベーションにならないのか。前からであろうと後ろからであろうと、犬を蹴飛ばせば犬は動く。もう一度動かしたければ、どうすればよいか。そう、もう一度蹴飛ばせばよろしい。

人間の場合も同様に、たとえばその電池を充電し、さらに再充電しと、充電をくり返せばよい。しかし、モチベーションとは、このようにその人間が発電機を備えている場合に限っていえることである。この場合であれば、あえて外から刺激を加える必要はない。本人自らが刺激を欲するからだ。

 
読んでおきたいコールセンター参考書モチベーションに関する参考書

目次

まえがき ── 「働く意欲」の向上は永遠の企業課題

第1章 モチベーションとは何か

元ユタ大学 特別教授 フレデリック・ハーズバーグ

  • KITAによるモチベーション
  • モチベーションにまつわる神話
  • 衛生要因と動機づけ要因
  • 永遠の三角関係:組織論か、産業工学か、行動科学か
  • 仕事の充実化を図る一〇のステップ
  • 【章末】ハーズバーグの経歴とその思想

第2章 新しい動機づけ理論

ハーバード・ビジネススクール 教授 ニティン・ノーリア
ハーバード・ビジネススクール 准教授 ボリス・グロイスバーグ
センター・フォー・リサーチ・オン・コーポレート・パフォーマンス リサーチ・ディレクター
リンダ=エリン・リー

  • 「欲動」がモチベーションの源泉
  • 四種類の欲動
  • モチベーションを組織的に底上げする
  • 直属の上司が果たすべき役割

第3章 知識労働者のモチベーション心理学

ハーバード・ビジネススクール 教授 テレサ・M・アマビール
著述家 スティーブン・J・クラマー

  • 「インナー・ワーク・ライフ」という新たな概念
  • 感情、認識、モチベーションの相互作用
  • 「仕事が楽しい」ことの効果
  • よい上司の行動、悪い上司の行動
  • 【章末】インナー・ワーク・ライフの調査方法

第4章 MBO失敗の本質

ハーバード・メディカルスクール 名誉教授 ハリー・レビンソン

  • MBO幻想にはF・W・テイラーの影が見え隠れする
  • MBOプロセスの最大の問題点
  • 客観性や定量化は逆効果に終わる
  • MBOプロセスの欠点
  • 個人の目標と組織の目標を一体化させる
  • MBOの実効性を高める三条件
  • MBOを導入する前に考慮すべき三要素
  • 新しいMBOプロセスが組織を変える

第5章 ピグマリオン・マネジメント

元ハーバード・ビジネススクール 教授 J・スターリング・リビングストン

  • 期待が部下を動かす
  • 期待が生産性に与える影響
  • 自己イメージを描き現状を超える
  • 低い期待も自己実現力の源
  • 沈黙は期待値の低さを伝える
  • 部下の能力やスキルを超えた期待は逆効果となる
  • 自分の能力への自信が期待を裏づける
  • 「鉄は熱いうちに打て」
  • 上司の能力こそ最も影響力が大きい
  • 優秀な若手社員の不幸
  • ライン・マネジャーの底上げが急務

第6章 モチベーショナル・リーダーの条件

元ハーバード大学 名誉教授 デイビッド・C・マクレランド
バーナム・ローゼン・グループ パートナー デイビッド・H・バーナム

  • 優れたマネジャーには権力動機が不可欠
  • ある営業担当マネジャーに突きつけられた事実
  • 部下のモラールと業績は比例する
  • 「権力動機」の効力
  • マネジャーの三タイプ
  • 組織志向マネジャーのプロフィール
  • マネジメント・スタイルを転換させる
  • 優秀なマネジャーを発見することも育成することも可能
  • 【章末】ワークショップの進め方

第7章 「理想の職場」のつくり方

nGENERAイノベーション・ネットワーク 所長 タマラ・J・エリクソン
ロンドン・ビジネススクール 教授 リンダ・グラットン

  • 優秀な働き者は給料や福利厚生だけで動いたりしない
  • 他社と同じ待遇が必要十分条件ではない
  • シグニチャー・エクスペリエンスを正しく伝える方法
  • 【章末】やる気を育てる要素

第8章 Y理論は万能ではない

元カリフォルニア大学ロサンゼルス校経営大学院 教授 ジョン・J・モース
ハーバード・ビジネススクール 教授 ジェイ・W・ローシュ

  • X理論とY理論
  • X理論でもY理論でもないアプローチ
  • ある大企業の工場と研究所の調査
  • 組織特性と業務のフィット
  • センス・オブ・コンピタンスへの動機を測定する
  • コンティンジェンシー理論で考える
  • マネジャーが考えるべきこと
  • 【章末】X理論からZ理論へ

第9章 本物のリーダーは社員と業績を秤にかけない

元ハーバード・ビジネススクール 教授 ラッセル・A・アイゼンスタット
ハーバード・ビジネススクール 名誉教授 マイケル・ビアー
元マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー ナサニエル・フット
チャルマーズ工科大学 研究員 トビアス・フレッドバーグ
チャルマーズ工科大学 教授 フレミング・ノーグレン

  • 社員重視か業績優先か
  • 社員と業績を天秤にかけない
  • 人心を掌握する
  • 共通の目的を掲げる
  • 幅広い視野を備える

 
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