モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
ダニエル・ピンク(著) 大前研一(翻訳)
講談社
本の詳細
この日、デシはグループAに対して、報酬が一日でなくなってしまったので、今回の実験では報酬はないと伝えた。
前回報酬を得たグループAの被験者たちの反応は異なった。前回よりもパズルに取り組む時間が大幅に減った。その時間は、報酬を得られた前日よりおよそ二分間少なかっただけではなく、パズルにはじめて取り組み、明らかにパズルを楽しんでいた初日と比べても、およそ一分少なかった。
報酬によって、人のやる気を短期間起こさせることは可能だ – ちょうど、カフェインの刺激によってさらにもう数時間頑張れるように。だが、報酬の効果は次第に弱まる。それだけではない。そのプロジェクトを続けるために必要な長期的モチベーションが失われるおそれもある。
人間には「新しいことややりがいを求める傾向や、自分の能力を広げ、発揮し、探究し、学ぶという傾向が本来備わっている」という。だがこの三番目の動機づけは、ほかの二つよりの脆弱である。これを活かすためには、ふさわしい環境が必要となる。「子どもや従業員、学生などの内発的動機づけの育成や向上に興味を抱いているなら、金銭的報酬などの外部から刺激する仕組みだけに目を向けるべきではない」
人間の癖を直すにはしつこさが必要だ。そう、この本はしつこいくらいこの新しい「習慣」「癖」を身につけるための反復練習を要求している。スポーツでも音楽でも一芸に秀でた人がみな通る道。それは驚くほど単調な練習を、驚くほどしつこくやることである。その結果、前人未踏の境地に到達する。
「生存」を目的としていた人類最初のモチベーションや、高度経済成長の時代の「アメとムチ」でモチベーションをコントロールする方法がいまだに社会で信じられ、モチベーション(動機づけ)の真実については「多くの企業が新しい知識に追いついていない」「時代遅れで検証されていない」と著者は語ります。
21世紀版のモチベーションは、ワクワクする自発的な動機づけが基本であるということです。持続する「やる気」をいかに引き出すか、本書はわかりやすく解説しています。
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目次
訳者まえがき 停滞を打破する新発想〈モチベーション3.0〉 大前研一
はじめに ハリー・ハーロウとエドワード・デシの直面した謎
科学的に考えれば、速度の計測をしようと斜面で鋼鉄のボールを転がしたら、途中からボールが空中に浮いていった、というくらい奇妙だ。この実験から、人は自分たちの行動に影響を及ぼすものを十分に理解しておらず、確固たる法則とされていることさえ穴だらけだ、ということを示している。
本書に出てくるキーワード
「思いがけない」(now that)報酬/基本的な報酬ライン/結果志向の職場環境(ROWE)/ゴルディロックスの仕事/「交換条件つき」(if-then)報酬/ソーヤー効果/タイプIの行動/タイプXの行動/20%ルール/マスタリーの漸近線/〈モチベーション1.0〉〈モチベーション2.0〉〈モチベーション3.0〉フェデックス・デー/ルーチンワーク/非ルーチンワーク
第1部 新しいオペレーティング・システム
第1章〈モチベーション2.0〉の盛衰
今世紀に入ってから10年の間 – ビジネスもテクノロジーも社会の進歩の、信じがたいほどの不振にあえいだ時期 – に長い間社会を牛耳ってきたこのOSはほとんど機能していない、ということも判明した。このOSは、前触れもなくたびたびクラッシュする。そこで、その欠陥の回避法や解決策を考えざるをえなくなった。何よりも、現代ビジネスの多くの側面と相容れないと証明されつつある。
機能しなくなった〈モチベーション〉
アメとムチの勝利
互換性に関する3つの問題
- 人間の行動目的をどう設定するか
- 人間の行動についてどのように考えるか
- 行動にどのように取り組むか
第2章 アメとムチが(たいてい)うまくいかない7つの理由
報酬は行動に対して奇妙な作用を及ぼすのだ。興味深い仕事を、決まりきった退屈な仕事に変えてしまう。逆に、遊びを仕事に変えてしまう場合もある。
〈モチベーション2.0〉に発生したバグ
期待以下の効果
- 内発的動機づけ
- 高い成果を上げる場合
- クリエイティビティ
- 好ましい言動について
望まないことを増やす
- 目標設定は倫理に反する行動を助長する?
- 報酬には依存性がある
- 短絡的なものの見方を生む短期思考
第2章の補章 アメとムチがうまくいく特殊な状況
信賞必罰を中心としたOSが実用性を失い、アップグレードが必要だからといって、完全にお払い箱にすべきだというわけではない。
第2部 〈モチベーション3.0〉3つの要素
第4章 自律性(オートノミー)
ことによると、「マネジメント」という言葉そのものを、「アイスボックス(icebox)」や「ホースレスキャリッジ(horseless carriage)」と一緒に、累々たる死語の山に投げ捨てる時期かもしれない。二十一世紀は、「優れたマネジメント」など求めていない。マネジメントするのではなく、子供の頃にはあった人間の先天的な能力、すなわち「自己決定」の復活が必要なのである。
自由に好きなように仕事をする
プレーヤーか、それとも駒か
4つの基本的要素
- 課題(Task)
- 時間(Time)
- 手法(Technique)
- チーム(Team)
自律性を養う術
第5章 マスタリー(熟達)
職場や学校では過剰に従順な態度を求められ、エンゲージメントはほとんど求められない。前者の態度でも、その日一日をかろうじて乗り切れるかもしれないが、後者がなければ翌日も頑張ろうという気力はわかないだろう。
もっとよい生き方を求めて
従順から積極的な関与へ
貨物船のゴルディロックス
マスタリーの3つの法則
- マスタリーはマインドセットだ
- マスタリーは苦痛でもある
- マスタリーは漸近線だ
魂にとっての酸素
第6章 目的
目的の追求は人間の本質である。その本質が人口統計上例のない規模で、そして最近までほとんど想像できなかった規模で、姿を現しているところだ。その結果、企業が活性化され、世界が再編される可能性がある。
人生の意義が問われる時代
目的という動機
- 目標(Goals)
- 言葉(Words)
- 指針(Policies)
充実した人生とは
第3部 タイプIのツールキット
個人用ツールキット – モチベーションを目覚めさせる9つの戦略
「フローテスト」を受けてみる
まず大きな問いかけをする……
……次に、小さな質問を問い続ける
ザクマイスターをとる
自分自身の勤務評定を行う
オブリーク・ストラテジーズで行き詰まりから抜け出す
マスタリーへ近づく5つのステップ
ウェイバーに倣い、カードを使う
自分用のモチベーショナル・ポスターを作る
組織用ツールキット – 会社、職場、グループ能力を向上させる9つの方法
補助輪つき〈20%ルール〉を試してみる
同僚間で「思いがけない」報酬を推奨する
自律性をチェックしてみよう
コントロールを手放すための3つのステップ
「目的は何か?」と問いかける
ライシュの代名詞テスト
内発的動機づけを利用するシステム設計
グループでゴルディロックスを促進する
オフサイト・ミーティングの代わりに、フェデックス・デーを設ける
報酬の禅的技法 – タイプI式の報酬
- 内外ともに公正さを重んじる
- 平均より高い報酬を与える
- 複雑な評価指標を用いる
保護者や教育者ツールキット – 子どもを助ける9つのアイデア
タイプIの宿題かどうか3つの基準でチェックする
フェデックス・デーを設ける
DIY方式の成績表を試す
お小遣いと家事の手伝いを結びつけないように
正しい方法で褒める
大局的な見地を与える
タイプIの5つの学校
アンスクーラーから学ぶ
生徒を先生に変える
お薦めの書籍 – 必読の15冊
グルに聞く – ビジネスの本質を見抜いた6人の識者
ダグラス・マグレガー
ピーター・F・ドラッカー
ジェームズ・コリンズ
カーリー・レスラーとジョディ・トンプソン
ゲイリー・ハメル
フィットネスプラン – 運動へのモチベーションを生み出す(そして持続させる)ための4つのアドバイス
本書の概要
ツイッター向けのまとめ
カクテルパーティー向きのまとめ
各章ごとのおさらい
ディスカッションに役立つ20の質問
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