吉田幸弘 (著)
扶桑社
本の詳細
明治新政府が発足して、時代は変わりました。幕末は戦に強い人が重宝されたかもしれませんが、欧米の文明に追いつけとされた明治になると、必要とされる人材が変わるのは仕方がありません。
そのような時、旧式のメンバーを大切にしすぎて、新しいメンバーを蔑ろにすると、組織の成長はストップしてしまいます。ここで、リーダーの人事力が試されるのです。
大久保は一緒にやってきた仲間である薩摩藩と長州藩のメンバーだけを幹部にし、肥前藩のメンバーは重要なポジションにつけたくなかったのです。それだけ肥前藩のメンバーが優秀だったため、乗っ取られることを恐れていたのです。
この点、西郷は違いました。肥前藩の優秀な人材をリーダーに抜擢し、最大のパフォーマンスを上げてもらおうと、西郷は自分たちにはない異分子のメンバーを抜擢したのです。
結果、参議に任命された一人、大木喬任は学制という大きな改革を成し遂げました。具体的には、国民の知識水準を高めるため、すべての国民に教育の機会を与えることを目的に小学校を設立したのです。
現代の企業でも似たようなことが言えますね。スタートアップ時代のメンバーを大切にするあまり、企業としての成長がストップしてしまうことがあります。たしかに、大久保のように自分のポジションを守りたいのはわかります。しかし、組織の実績を上げるならば、自分たちには及ばない優秀な人材に大きなポジションを積極的に与えることはリーダーには必要なのです。
目次
第1章 人間力の高い西郷のリーダー像
- エピソード 1 岩倉具視らが恐れをなすほど優れていた西郷のリーダーシップ
- リーダー西郷は決して驕らなかった
- 改革時には異分子を積極的に抜擢する
- 部下の隠れた能力は最大限に発揮させる
- 部下の得意分野を大きな実績にする
- 13歳から持っていた瞬時の判断力
- 西郷語録コラム(1)
第2章 リーダーの最大要素は「ゆるす力」
- エピソード 2 恩師・島津斉彬の広い心に西郷は大きな影響を受けた
- 物事は広い視点で考える斉彬の教え
- 敵をゆるせば倍のリターンを得られる
- 組織をゆるしたおかげで維新が成功した
- どんな悪口を言われても決して戦わない
- やらかしてしまった部下は活かすチャンス
- 西郷語録コラム(2)
第3章 誰もがついてくる強いチームづくり
- エピソード 3 西郷とはまったく意見が合わない大村益次郎でも戦力にできる
- 西郷が選ぶナンバー2の基準
- 部下に部下を育てさせる郷中教育
- 不当な目標はチームの崩壊を招く
- 反抗する部下は上司の構え方で変わる
- 意見がまとまらない会議の片づけ方
- 西郷語録コラム(3)
第4章 優秀なリーダーを生み出す上司力
- エピソード 4 なぜ西郷のもとに名だたるリーダーばかりが揃ったのか
- 有り余る行動力が持ち味の桐野利秋
- 裏切り者と言われても戻ってきた貴島清
- 西郷をなだめてくれる冷静な篠原国幹
- 地味な功績でもリーダーになった別府晋介
- 兄の元を去っても活躍した西郷従道
- 西郷語録コラム(4)
第5章 上司を振り向かせる人たらし術
- エピソード 5 因縁の上司・島津久光に歩み寄ったのは西郷だった
- 下級藩士・西郷の意見が斉彬に届いた理由
- 厄介な上司は自分だけでは動かせない
- 西郷の失敗談に見る根回しの重要さ
- 年下の部下をうまく操った西郷の勝算
- 出世した西郷がかつての上司に見せた情
- 西郷語録コラム(5)
第6章 自分を助けるフォロワーづくり
- エピソード 6 大久保利道を始め、西郷は大勢の人々に救われていた
- なぜ大久保利道は部下にフォローされないのか
- 優秀な同期はライバルではなくフォロワー
- 要注意人物は味方にできる
- 影の立役者は表でも活躍する
- 西郷の人的ネットワークの凄さ
- 西郷語録コラム(6)
第7章 相手を不幸にしない交渉術
- エピソード 7 相手の気持ちを配慮し、血を流さない関係を築いた西郷
- 外国人を味方につけるもてなし交渉術
- 相手からの交渉における気構えと決断力
- 相手を怒らせても交渉は成立する
- 穏便に歴史を変えた勝海舟との奇跡の会談
- かつての敵も味方に変えるバイアウト交渉術
- 西郷語録コラム(7)
第8章 左遷もプラスに転向させる技術
- エピソード 8 2度の島流しに遭うも、人情だけで居場所はつくれる
- 左遷先で幸せをつかんだ適応力
- 不遇のときこそ自分を高める絶好の機会
- パワハラ・不正を打破して影のリーダーになる
- 目の前にいる人たちに集中すれば光は見える
- 誠実な姿勢は自分を救ってくれる
- 西郷語録コラム(8)
第9章 西南戦争に見る一流の決断力
- エピソード 9 一流の財産は人。西郷の最期を支えた人たち
- 不要な人間は再生させるべきである
- 意にそぐわない決断もときには必要
- 傷が深くならないうちに止めるのも一流
- 優秀なメンバーが集まった最強の薩摩軍
- 死ぬまで敵や味方に愛された西郷
- 西郷語録コラム(9)
- おわりに
- 西郷隆盛の歴史上の歩み
- 参考文献