白川克(著)榊巻亮(著)
日本経済新聞出版社
本の詳細
今まで100個作っていたものを明日も100個作る。翌日は頑張って120個作る。今まで原価100円だったのを頑張って99.8円にする。こういう仕事はもはやホワイトカラー、特に管理職には期待されていない。正確に言うと、期待しても会社の利益にはほとんどつながらないから、期待しない方が良い。
こう言い直してもいい。部下から上がってきたものを承認するだけの管理職は必要とされていない。
あなたが管理職だとしたら、これからのあなたの仕事は「業務を管理すること」ではない。
全く違った商品を作る。全く違った場所で作る。劇的に安く作るようにする。もはや作らなくても利益が上がるようにする。モノではない何か(ライフスタイル? サービス? つながり?)を提供する ーー など。
なんであれ、変化を起こし、会社や事業を新しくし、良くしていくことこそが、あなたがやるべき仕事なのだ。
これからの管理職の仕事の100%が変革だとは言わない。誤解を恐れずにおおざっぱに言えば、「会社で上位20%の方」は、変革を自ら起こすことを期待される時代が来ている。
企業改革について書かれた良書はいくつかあるのだが、ほとんどが翻訳書である。当然、欧米の企業での変革を前提に書かれている。欧米企業では、トップが変革をリードするケースがほとんどだ。だから変革における悩みのタネも、例えば「中間管理職の変革へのやる気をどう引き出すか」といった、トップからの目線である。
だが、日本企業で変革を立ち上げる際に一番悩ましいのは、実は「いかにトップに味方になってもらい、後押ししてもらうか」である。日本企業ではミドルが変革を起こし、役員にスポンサーになってもらうケースが圧倒的に多い。当然、そこでの主役は花形経営者ではない。
毎朝ぎゅうぎゅう詰めの地下鉄に乗って通勤してくるような、普通の会社員である。
目次
プロローグ
A 変革を立ち上げよう
- 変革をリードできない管理職には価値がない
- 変革プロジェクトの成否は、最初で9割決まる
- ある経営企画室長からの手紙
- この本の特徴
B 立ち上げのためにすべきこと
- 変革プロジェクトは「4つのP」が明確でなければならない
コラム 準備は、みな4Pで整理できる - 「4つのP」を明らかにする、4ステップ
- 「計画作り」と「態勢作り」は同時に進めよ
第1部 「どんな変革か?」をざっと描く Concept Framing
C まずは同士を集めよ
- 組織図に頼らない、一本釣りが有効
- 抵抗勢力候補など、自分と違うタイプを集めろ
- 公募作戦の落とし穴を避ける
- 変革プロジェクトに向く人、向かない人
事例 自分の仕事をなくすプロジェクト
D 変革のゴールを決める
- 既に達成したかのごとくゴールを語れ
- 意思決定に使い倒せるゴールを決めろ
- 目指さないゴールも明らかにしておくこと
コラム 効率化の数値目標はなぜ大抵30%アップなのか
E なぜ良くなるのかを端的に示す
- 闇雲に力仕事をする前に、仮説を持て
- コンセプトとは何か
事例 コンセプト「ハブ&スポーク」
事例 コンセプト「期限内に契約を」
コラム システム再構築はコンセプト足りえるか? - コンセプトがパラダイムシフトをもたらす
F ゴールやコンセプトをどうやってひねり出すか?
- 意識の高い人と議論する
- 「そもそも論」に立ち戻れ
- とりあえず、考えたことは紙に書き出せ
- トコトン議論するには、合宿が1番
- 「言葉、絵、数字・・・・・」表現方法は問わない
コラム プロジェクトの最初にコンセプトありき?
G タイプ別、変革の落とし穴
- あなたの会社はイケイケか? トップダウンか?
H トップの支援を取り付ける
- 「ありがたい方針」を聞けることは、まれだと覚悟せよ
- 改めて、全社戦略を聞くことの意義
- 変革にとっての「制約」を聞き出せ
コラム 吉野家とスターバックスの戦略ストーリー - バックアップの約束を取り付けよ
I プロジェクト体制を固める
- 仲良しクラブではいずれ行き詰まる
プロジェクトリーダー
プロジェクトオーナー
業務分析担当
システム分析担当
本当に全員必要?
第2部 現状調査/分析 Assessment フェーズ
J 業務とシステムを棚おろす
4大調査フォーマット
- (1)一覧表
- (2)アクティビティ一覧
- (3)業務フロー(スイムレーンチャート)
- (4)ファンクショナリティ・マトリクス
- 4大調査フォーマットをカスタマイズして使う
- たとえ知っていても、現状調査は必要
K プロのヒアリング技術
- 1 業務は流れで聞け
- 2 フリートークも有効
- 3 数字で感覚を合わせよ
- 4 聞いたことはその場で書き出せ
- 5 「ざっくり」から「深く」へ
- 6 本人にも書いてもらう
事例1 仕事割合の円グラフ
事例2 休憩コーナーで、みんなの意見を募る - 7 現場とよい関係を作ることを裏の目的にせよ
コラム ヒヤリングの副産物 - 上級編 詳細な棚おろしのまえに、あえてざっくり棚おろしをする
事例 あえて、手書きの業務フローから始める
L 課題を特定する
- ステップ1 まずはリストに貯める
コラム 当たり前の中には非効率が潜んでいる - ステップ2 細々した課題をくくる
- ステップ3 課題の実態をさらに調べる
- ステップ4 全体像に課題を書き込む
- 課題を書く時には遠慮しない
M 分析は「構造化と実感」
- 分析では示唆(だから何?)を示せ
- そのまま施策を語れる分析を目指せ
N 分析の7つ道具
- (1)定量比較
- (2)プロセス比較
- (3)グルーピング
- (4)横串グルーピング
- (5)相関比較
- (6)2次元マッピング
- (7)ツリー分解
第3部 将来の姿を描く Business Model
O 施策をひらめく
- ひらめき方その1 課題解決アブ口ーチ
事例 百数十個の施策をしらみつぶしに実現した - ひらめき方その2 理想像アブ口ーチ
- ひらめき方その3 普段から考える
- ひらめき方その4 施策出しで遊ぶ
- 施策はちゃんと出し切ったのか?
事例 施策を急ぎ過ぎて、失敗したケース
P 業務改革の王道施策6選
- 施策1 標準化
事例 事業部のビジネスモデルが違うので、何もかもバラバラな会社 - 施策2 一元管理
事例 40%の効率化よリもインパクトがある一元化 - 施策3 業務集約
- 施策4 アウトソース/オフショア
- 施策5 承認ブ口セスの見直し
- 施策6 納期短縮
事例 「24時間以内」を目指しての総力戦
Q ダメ施策を捨て、良い施策を残す
- 施策一覧で全関係者と合意する
事例 残った宝の山を一つ一つ実現していく - 施策一覧の作り方
- ステップ1 施策一覧にアイディアをどんどん貯める
- ステップ2 施策をまとめる
- ステップ3 施策の選定基準を決める
- ステップ4 基準にそって施策を採点する
- ステップ5 施策の実施時期を分ける
R 施策を練り上げる
- 発散/収束モデルで施策を練り上げる
- ステップ1 「どの業務を集約するか?」を発散/収束モデルで検討する
- ステップ2 集約対象案件を発散/収束モデルで検討する
- ステップ3 切り替えステッブを発散/収束モデルで検討する
- 施策練り上げのコツ
S 抵抗勢力と向き合う
- 抵抗レベル1 無言の抵抗
事例 「批判になっていない批判」を見過ごし、痛い目にあった - 抵抗レベル2 正面からの批判
事例 ある執行役員からの批判 - 抵抗レベル3 屁理屈での抵抗
- 抵抗レベル4 話すら聞いてくれない
事例 まずは批判を受け止める〜ある課長のケース - 抵抗レベル5 反対運動を繰り広げる
T 変革に関係者を巻き込め
- 「命令されたから」から「俺のプロジェクト」へ引き上げろ
- 立場の違う混成部隊を「立場を越えたOne Team」に変える
- メンバー全員が本気で「変わろう」と思っているか?
第4部 計画の価値を示し、GOサインをもらう Decision
U マスタースケジュールを描く
- ポイント1 締め切りを確認する
- ポイント2 積み上げよりも逆算で
- ポイント3 ボトルネックは業務担当者
- ポイント4 繁忙の波を避ける
- ポイント5 段階的に変えるか? ビッグバンか?
- ポイント6 クイックヒットは先に
事例 小さく始め、業務改革の価値を示す - ポイント7 優先度の低い施策は後に
- ポイント8 やりきれるか?(時間と体制)
- ポイント9 やはりバッファは必要
- ポイント10 関係者と合意してこそのスケジュール
V リスクを把握し、対応する
- プ口ジェクトにはリスクがつきもの
- リスクを把握し、対応する4ステッブ
- ステップ1 まずは不安や懸念を洗い出す
事例「なぜ上手くいかないのか?」を徹底して吐き出す会議 - ステップ2 リスクを2つの面から評価する
- ステップ3 対策を練る
- ステップ4 費用対効果分析に反映させる
W プロジェクトの価値をお金で示す
- 費用対効果分析とは何か?
- ステップ1 分析の範囲を決める
- ステップ2 価値の源泉を洗い出す
- ステップ3 定性効果と定量効果に分ける
コラム 従業員満足度を金額換算してみた - ステップ4 効果を金額化する
コラム 効率化した時間は、どう利益に変わるのか? - ステップ5 投資金額を見積もる
- ステップ6 時系列で整理する
- ステップ7 グラフ化する
- ステップ8 リスク分析を織り込む
- 3つのケースを書くことで、意思決定を支える
X 計画の価値を高める
- 施策のバリエーションを選択する
事例 システムだけ作っても、投資を回収できない - 黒字転換を目指してもがく
事例 当初のグラフがダメだったので、良い施策になった - それでも赤字になった時の対応策
- 本当に効果が出ない時は、プロジェクトを諦める
- Goサインが出ていても、費用対効果分析は必要
事例 リーマンショックで、経営陣の意見がガラリと変化 - 費用対効果分析を何度も実施して精度を上げる
- 費用対効果分析を使ってきちんと事後評価を
Y 投資決済を突破する方法
- 経営会議を通す、2つの理由
- 経営会議では「夢とソ口バン」を語れ
- 計画よりも「計画を作った人」を見られていると思え
- 100枚の検討を1枚に凝縮せよ
- 最後の最後は感情の後押しも必要
事例 理屈をすっ飛ばしたスピーチ
Z Just Do It!!
- さて、4Pはどうなったのか?
- 「態勢の質」は高まったか?
- まずはお疲れ様でした
- どこまで計画を練り上げたら、実行に移れるのか
- 業務改革ブ口ジエクトはこの後どうなるのか?
- 最後に個人的な話
あとがき
索引
白川克(著)榊巻亮(著)
日本経済新聞出版社