沢渡あまね(著)
ダイヤモンド社
本の詳細
たとえば、あなたが新たにハンバーガーショップを始めるとします。チラシを配って、自分のお店のことを知ってもらいたい、来店してハンバーガーを食べてもらいたい。来てくれそうな50人に当たりをつけてチラシを配り、50人が来てくれればベストでしょう。
しかし、最初はなかなかうまくいかない。まずは300人に配ってみて、どういう人がチラシを受け取ってくれるか? どの曜日や時間帯なら受け取ってもらいやすいか? 配る場所に問題はないか? そんなことを実施で学び、スタッフと一緒に振り返りながらベストな状態を目指していく。次は100人に配れば済むようにする。いわば、徐々にこなれさせていくプロセスも大事。一足飛びでやろうとしても、うまくいかないものです。
より少ないインプットでより多くのアウトプットを出すことができれば、生産性が高く、そうでなければ低いことになります。なるべく少ない原材料、情報量、あるいは時間やコストで、より多くの成果を出し続けられる状態を作る。これが理想です。
いきなりベストを目指そうとする。すなわち、いきなり少ないインプットで、多くのアウトプットを出そうと試みてしまう。これがかえって非効率を生み、生産性を下げるケースが多々あります。
ある程度こなれた業務であれば、可能な限り投入資源を減らす努力をする。これは至極もっともです。ところが、まったく新規の業務や、こなれていない業務でいきなり最小のインプットを目指すのはいかがなものでしょう?
「働き方改革」ムードが蔓延するなか、私たちはどうしても減らすことばかりに意識が向きがちです。しかし、減らすだけでは生産性はあがらない。ここにも大きな落とし穴があります。
目指すは、ネガティブな仕事を減らして、ポジティブな仕事を増やす。
いま私たちに必要なのは、増やす勇気かもしれません。
目次
はじめに
- なぜ、生産性があがらないのか?
- 「時短」で生産性はあがらない
- 生産性とは何か?
- 生産性向上には「減らす」と「増やす」が必要
- 生産性をあげる4つのフェーズ、8つのステップ
第1章 問題はどこにある?
ステップ1 業務を洗い出す
- 01 すべての業務を洗い出す
── まずはリスト化して全体像をざっくり把握する - 02 「隠れ業務」をあぶりだす
── 問題を引き起こすのは、つい忘れがちな仕事 - 03 この業務の目的はなんだろう?
── 仕事の目的がわかればムダは見えやすい - 04 問題の原因にアタリをつける
── 5つの要素に分解すると問題点が見えてくる - 05 ラスボスは誰か?
── 本当のお客さんがわかれば手戻りは減る - 06 定常業務の割合を把握する
── ルーチン業務を減らして付加価値業務を増やす - 07 「のび太のくせに生意気だ」
── 重要でないことに多くの時間を使っていないか? - 08 各業務の4つの方向性を決める
── すべての業務に等しく力をかけてはいけない - 09 業務を測る
── 施策の効果は定量化しないと把握できない - 10 意識していないと測定できない
── 測定できないものは改善できない - 11 業務一覧をアップデートする
── 仕事は生き物。対策も固定化せずに作り変える
COLUMN 見える化・測定・報告で生産性をあげる(株式会社ナムコ AM施設営業部・営業統括チーム)
第2章 ムダをなくす
ステップ2 ムダに気づく
- 01 ネガティブな仕事を洗い出す
── スピードを遅らせる負のスパイラルを断ち切る - 02 ネガティブワードは宝の山
── 3大ワードから仕事のムダを発見する - 03 形容詞・副詞が出てきたら要注意
── あいまい語を「数字」に変えて改善する - 04 「過去はこうだが、いまはどうだ?」
── 本当は必要ない業務に時間を奪われていないか - 05 「もしも〜がなかったら?」
── 視点が変わり、ムダに気づける魔法の質問 - 06 外の風を当てる
── 当事者は仕事のムダに気づきにくい - 07 探すムダ、探させるムダ
── 「4つの時間」があなたの仕事を遅らせている - 08 切り替えのムダ
── 1度に集中できる環境をどう作るか? - 09 相手は常連さんか、一見さんか?
── 相手に合わせるひと工夫が結果的に効率的 - 10 自責主義は危ない!
── 問題が起きたら「組織の仕組み」を疑う
COLUMN 女性同士のお喋り会が業務改善会議に(株式会社日本旅行 ソリューション営業本部)
第3章 で、どう変える?
ステップ3 改善策を考える
- 01 「書き出す」「見出す」「ひねり出す」
── 付箋を使って現場のリアルな声を拾う - 02 たまにはカジュアルに
── 環境を変えると本音の意見出しができる - 03 「面」の引き出しをたくさん持とう
── 「面リスト」で改善策の抜け漏れを減らす - 04 「立ち上げ」と「運用」で眺める
── 打ち上げ花火で終わらず改善を定着させるには? - 05 「パーキングエリア」を設けよう
── 本題から外れるアイデアの整理法 - 06 「減らす」だけに走らない
── 減らした時間で何を「増やすか」考える - 07 インプットを与えているか?
── 成果を出すには事前のインプットが8割 - 08 苦手なことはやらない
── 気合と根性論は生産性の敵 - 09 多様性こそ発想力の肝
── 仲良しクラブから新しい気づきは生まれない
COLUMN 開発に違う視点を積極的に取り込む(イートアンド株式会社)
第4章 誰でもできるようにする
ステップ4 標準化する
- 01 繰り返し性と重要度の2軸で考える
── 標準化・マニュアル化できる仕事① - 02 発生頻度と所要時間の2軸で考える
── 標準化・マニュアル化できる仕事② - 03 イヤな仕事こそ標準化せよ
── 面倒な仕事は手順書を作って仕組みで回す - 04 何でもないようなことが、危険
── 変化したときに回らないリスクを考えておく - 05 レア作業こそ手順書を作れ
── 3つを残すだけでシンプルに生産性をあげる - 06 属人化は悪ではない
── 良い属人化は活かし、悪い属人化だけ変える - 07 番号で会話しよう
── 手間をはぶいてミスをなくし、品質もあがる
COLUMN 工場の現場もより働きやすい環境に(ジヤトコ株式会社 素形材工場)
第5章 横入りに振り回されない
ステップ5 横入りをナントカする
- 01 横入りにはどんなものがあるか?
── 仕事の流れを止める邪魔者を整理する - 02 人は目先の仕事に対応したがる
── 「仕事している感」にダマされない - 03 インシデント管理簿で記録する
── [ステップ①]横入りを可視化する - 04 既知か未知か?
── [ステップ②]横入りをチームで共有する - 05 「既視」を増やそう
── 「どこかで見たことある」が生産性をあげる - 06 インシデント会議をやろう!
── 1人で悩まずチームで悩むと共有化が進む - 07 クローズする
── 完了したらデータを残して既知化する - 08 時には逃げる判断も大事
── 「たたかう」「にげる」「ぼうぎょ」「じゅもん」「どうぐ」 - 09 「そこにキミがいるから振るんだよ」
── 戦略的離席も生産性を守るワザ
COLUMN 「どこでもオフィス」で社員の主体性を醸成(ヤフー株式会社)
第6章 実行力を高める
ステップ6 やってみる
- 01 やりやすいところから、やってみる
── 最初でつまずくと効率は悪くなる - 02 やる気がでそうなところから、やってみる
── 得意な仕事は生産性が3倍あがる - 03 面倒なことからチャレンジする
── 大変だからこそ課題が先に見えるメリット - 04 期限を決める
── 3段階で「やめる」基準を決めておく - 05 キャッチコピーをつけてみよう
── 多様なメンバーを同じ方向に導く道しるべ - 06 地味な仕事にも光を当てる
── 目立たない仕事こそ実行力の屋台骨 - 07 生産性の高いやり方を認める
── 個を活かしてチームの力を最大化する
COLUMN 管理業務に光を当てて組織を活性化する(株式会社ナムコ AM施設営業部・営業統括チーム)
第7章 なぜ改善は続かない?
ステップ7 定着させる
- 01 「わざわざ」を「自然に」
── 面倒だが重要な仕事を行える仕組み作り - 02 強制力としつこさも大事
── 個人の自主性に頼りすぎると失敗する - 03 上司から部下への報連相を怠らない
── 定期的なフィードバックが改善風土を作る - 04 人は納得すると主体的に動く
── 抵抗勢力は説得しようとすると逆効果 - 05 人は改善した後の世界を知らない
── 誰にとっても「未知なるもの」は恐ろしい - 06 対立上等
── 健全にぶつかれば結束力はより強まる - 07 指示⇔相談モードを使い分ける
── 伝え方次第で結果は大きく変わる - 08 「意識高い仲良しクラブ」にしない
── 現場で温度差のある改善は定着しない - 09 広報をうまく利用する
── 働き方改革は人事戦略ではなく「広報戦略」 - 10 ワクワクを目指さない
── 押しつけのやらされ感は百害あって一利なし - 11 そこに「らしさ」はあるか?
── 手法をコピペするだけでは組織は変わらない
COLUMN 社員同士の偶然の会話から「らしさ」を知る
第8章 チームをドライブさせる
ステップ9 振り返る
- 01 数字⇔感覚チェックを行き来する
── 意思決定には主観・客観の両方が必要 - 02 フィードバックする
── 意見を言い合える「場」と「雰囲気」作り - 03 失敗を分析しよう
── 3つの視点から失敗を次に生かす - 04 成功事例を共有しよう
── 「ストーリー」と「裏方」に光を当てる
COLUMN 制度よりマインドセットで働き方は変わる(日本マイクロソフト株式会社)
おわりに ── 「ワークライフシナジー」ある社会を目指して
沢渡あまね(著)
ダイヤモンド社