為末大
プレジデント社
本の詳細
辞書を引くと「諦める」とは「見込みがない、仕方がないと思って断念する」という意味だと書いてある。しかし、「諦める」には別の意味があることを、あるお寺の住職との対談で知った。
「諦める」という言葉の語源は「明らめる」だという。
仏教では、心理や道理を明らかにしてよく見極めるという意味で使われ、むしろポジティブなイメージを持つ言葉だと言うのだ。
さらに漢和辞典をひもとくと「諦」には「さとり」の意味もあるという。
こうした本来の意味を知ったうえで「諦める」という言葉をあらためて見つめ直すと、こんなイメージが浮かび上がってくるのではないだろうか。
「自分の才能や能力、置かれた状況などを明らかにしてよく理解し、今、この瞬間にある自分の姿を悟る」
諦めるということはそこで「終わる」とか「逃げる」ということではない。そのことを心に留めながら、本書を読んでいただければと思う。
「諦める力:はじめに」より。
目次
はじめに
第1章 諦めたくないから諦めた
- 十八歳の決断
- 努力しても無理かもしれない
- 手段を諦めることと目的を諦めることの違い
- 「勝ちやすい」ところを見極める
- 憧れの人は自分の延長線上にいるか?
- 負け戦はしない、でも戦いはやめない
第2章 やめることについて考えてみよう
- 続けることはいいことなのか?
- できないのは努力が足りないからか?
- 諦めないことの代償
- 応援してくれる人が責任をとってくれるわけではない
- 「せっかくここまでやったんだから」という呪縛
- 「今の人生」の横に走っている「別の人生」がある
- 他者の願望や期待に配慮しすぎていないか?
- 「あなたには向いていない」と言ってくれる人
- 「飽きた」という理由でやめてもいい
- 日本人の引退の美学、欧米人の軽やかな転身
- やめるための「儀式」をしよう
- ルールと締め切りは絶対に守る
- 迷ったら環境を変えてみる
- 何を「普通」ととらえるかで人生が変わる
第3章 現役を引退した僕が見たオリンピック
- 「勝てなくてすみません」への違和感
- なぜ負けたかわからない
- 自分はどの程度自由か
- 論理ではなく勘にゆだねる
- 「負けで悔しいでしょう?」と聞くのは残酷か
- 「夢がかなう」人はごくひと握り
- 一意専心よりもオプションを持つこと
- コーチを雇う欧米人、コーチに師事する日本人
第4章 他人が決めたランキングに惑わされない
- 「したたかなきれいごと」で存在感を出すイギリス
- 「勝っている状態」を定義する
- 「どっちがいいか」という選択を毎日意識的にしてみる
- いつまでも自分で決められない人たち
- 選ばれるのを待つ人生か、自分で選ぶ人生か
- 積む努力、選ぶ努力
- 「俺的ランキング」でいいじゃないか
- 「陸上なんていつやめたっていい」と言い続けた母
- どの範囲の一番になるかは自分で決める
- 金メダルは何の種目で取っても金メダル
- AKB総選挙で生まれた「それぞれの物差し」
第5章 人は万能ではなく、世の中は平等ではない
- 不条理というものについて
- 生まれによる階級、才能による階級
- あなたにとっての苦役は、あの人にとっての娯楽
- 「絶対に正しい」ものがあると信じているアメリカ人が苦手
- 「リア充」なんて全体の10パーセントもいない
- 「誰とでも」は「誰でもいい」と同じ
- 「オンリーワン」の落とし穴
- アドバイスはどこまでいってもアドバイス
- 「あなたのためを思って」には要注意
第6章 自分にとっての幸福とは何か
- 高倉健さんはなぜヤクザ映画をやめたのか
- 計算、打算は戦略の基本
- 手に入れていくことの幸福、手放していくことの幸福
- 「バカヤロー、おまえがなれるわけないだろ」
- 「やめてもいい」と「やめてはいけない」の間
- 他者に対する期待値を低くする
- 世の中は平等ではないから活力が生まれる
- モビリティを確保する
- どうにかなることをどうにかする
おわりに
為末大
プレジデント社