売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門

売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門

売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門

遠藤 直紀(著)武井 由紀子(著)
日本実業出版社

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本の詳細

「会社にとって利益は空気と同じ。空気がないと生きてはいけない。
しかし、空気を吸うために生きている人間はいない」

オムロン創業者の立石一真氏は、
利益を得ることは企業の存続にとって必須の生命線ではあるが、
それ自体は企業経営の目的になりえないことを指摘している。

これに異論を唱える経営者は少ないだろう。

しかし、目的と手段は入れ替わりやすく、
定量化しやすい利益や売上といった
収益指標が事業運営の目的と化してしまう。

お金には色がないと言うが、
ビジネスにおいては、はっきりと二つの色、
すなわち「良い売上」と「悪い売上」がある。

「良い売上」とは、顧客の課題を解決した結果、
顧客が「この商品・サービスを買ってよかった」と
心から企業に感謝をして対価を支払うことを意味する。

一方「悪い売上」は、どんな理由があったとしても
顧客にとっては納得感が薄く、感謝のしようもなく、
二度とその会社から買わないと思いながら
(あるいは将来そう思う可能性を残したまま)
渋々支払う対価である。

売上だけを追うと、企業は知らず知らずのうちに、
顧客にとって価値が低い売上にも手をつけるようになり、

売上は上がっているが顧客の気持ちは離れている
という状態をもたらしてしまう。

今、企業が行うべきは「良い売上」の追求と、
「悪い売上」の排除なのである。

顧客志向がお題目に終わるのには理由がある。
その多くは、顧客志向は儲けと反比例するという誤解があること、
顧客が感じている価値は収益のように可視化できず管理が困難なこと、
そして組織全体で顧客に価値を提供する仕組みがないことである。

顧客満足、クライアントファーストを
理念に掲げる企業は多いですが、
顧客志向が収益につながらないのが
現実です。

本書は、顧客の心理と行動を定量・定性データで分析し、
顧客を満足させることが売上に直結するアクションを
導く方法論を徹底解説しています。

「顧客価値の最大化」が「売上の最大化」に
自然につながるように経営を変革する時の
「羅針盤」となる一冊です。

目次

はじめに
プロローグ 顧客満足が高いのに競合に勝てないワケ

  1. 驚異的な高収益を生み出す長期顧客志向経営
    • 顧客志向経営で26年連続増収 — オオゼキ
  2. 良い売上、悪い売上
    • 「売上=顧客満足の結果」の罠
    • ロイヤルカスタマーは売上上位顧客ではない
    • 「良い売上」にフォーカスして成長 — ソニー損保
  3. 売上につながる顧客満足の正体
    • 顧客満足はもう古い
    • ロイヤルカスタマーの価値
  4. ロイヤルカスタマーを作る二つのポイント
    • (1)正しいモノサシ=ロイヤルティ指標を持つ
    • (2)カスタマーエクスペリエンスを改善する
    • カスタマーエクスペリエンス改善で復活 — デルタ航空

ステップ1 良い売上にフォーカスする — ロイヤルティ指標の設定

  1. 経営の最高指標は「売上・利益」ではなく「ロイヤルティ指標」であるべき理由
  2. ロイヤルティ指標を検討する三つの下準備
  3. 顧客の好意度が測れる質問を選ぶ
    • 「NPS」とはどのような評価指標か?
    • NPSの対抗指標「CES」とは?
  4. ロイヤルティ指標は「収益連動度」をチェック
    • 独自指標を用いて驚異的な業績を生む北米の銀行 — TDバンク
  5. NPSを上げたら売上が落ちる矛盾への対処法
    • 全顧客にロイヤルティの評価をしてもらう
    • 量的な指標を補助KPIとして導入する

ステップ2 顧客を怒らせる方法を考える — カスタマージャーニーマップ策定

  1. 顧客との接触をどれだけ「部分最適」しても意味はない
    • 顧客ロイヤルティ向上のためには「全体最適」
    • 部分最適ではどこかで必ず伸び悩む
  2. 顧客の経験をストーリーでとらえる「カスタマージャーニーマップ」
    • 高級レストランのカスタマージャーニーマップを描く
    • カスタマージャーニーマップ作成を目的化しない
    • カスタマーエクスペリエンスとどう違うのか?
    • カスタマージャーニーマップが失敗する四つの理由
  3. カスタマージャーニーマップの描き方
    • 顧客の立場に立とうとして、顧客の姿が頭に浮かんだ人は失格
    • まずは「お客様を怒らせる方法」を考える
    • 「最高のファンになってもらう方法」を考える
    • 網羅製、完全性、正確性にこだわりすぎない
    • カスタマージャーニーマップの発展的活用法

ステップ3 顧客の声を集める — 顧客フィードバックの獲得

  1. 「顧客からのフィード」を獲得する仕組みをつくる
    • 総合指標とドライビングファクター
    • アンケートで顧客に聞くべきドライビングファクターの見つけ方
    • 総合調査と個別調査
  2. うまく聞かないとデータもゴミになる — 調査設計のコツ
    • 最も聞きたい内容を最初に聞く – 質問の構造と順番
    • 自由回答欄を最低一つは設ける
    • 設問数は少ない方が回答率が上がる
    • 適切な顧客に適切な頻度で聞く
    • 定量化できないドライビングファクター
  3. 調査も「カスタマーエクスペリエンス」の一部と心得る
  4. 調査バイアス・不正との戦い方
    • 調査結果と社員評価をひもづけると危険
    • 対面販売、担当営業制では顧客は正直に回答しない
    • 嫌いな理由がうまく言えないと評価は上振れする
  5. 悪い評価の即時対応
  6. 三つの基本集計

ステップ4 顧客は6タイプに分けて考える — ロイヤルティ別に顧客の特徴把握

  1. 顧客は「好意度」と「収益性」で6タイプに分類
    • ロイヤルティの詳細分析
    • ロイヤルティ別顧客像とドライビングファクター分析
    • 活動の優先順位づけ
  2. 分析すると見えてくるもの
    • 具体的な改善方針とデータによる説明
    • ロイヤルカスタマーなのに口コミしない顧客
    • ないがしろにされるロイヤルカスタマー
    • 「ニセ推奨者」「隠れ中立者」の取り扱い
    • 人にすすめたくないから0点という批判者
  3. 批判者を減らすべきか、推奨者を増やすべきか?
    • 推奨者作りの隠れたメリット

ステップ5 顧客の行動はウソをつかない — 定性調査で顧客インサイト理解

  1. 声なき声まで拾える定性調査
    • 定量調査・アンケート調査だけでは半分もわからない
    • 個別調査における定量調査と定性調査の関係性
    • 内製化が進む定性調査
  2. 定性調査を実施する本当の意味
    • 顧客理解と共感を何より重視する業界最高NPSの金融機関 – USAA
  3. 事実ベースで分析する – 顧客の行動はウソをつかない
    • ニーズを言語化することの限界
    • 言語化されたニーズと行動のギャップ事例
  4. 定性調査でカスタマーエクスペリエンスを見極める
    • 行動+感想のセットでとらえる
  5. 定性調査の種類と特徴
    • カスタマージャーニーインタビュー
    • 行動観察調査
    • エスノグラフィー
    • 行動観察で声なきニーズをとらえる – LIXIL

ステップ6 顧客と共に改善する — 成功確度を高めるユーザ中心設計手法

  1. 二つの改善サイクル
    • フロントライン改善
    • 戦略的改善
  2. 成功確立を上げるデザイン思考アプローチ – ユーザ中心設計手法
    • 特徴(1)顧客ターゲッティング
    • 特徴(2)カスタマーエクスペリエンス設計
    • 特徴(3)実顧客による検証
    • 特徴(4)費用対効果を高めるスパイラル手法
    • 特徴(5)早期可視化による品質向上
    • ユーザ中心設計手法でATMをリニューアル – セブン銀行
  3. ユーザ中心設計手法のメリット
    • 競争激化時代に成功確度をあげられる唯一の手法
    • 自然とエネルギッシュなチームができる
    • やらなくてよいことが明確に
  4. 顧客心理をとらえた店舗エクスペリエンス改善 – フェデラルエクスプレス

ステップ7 顧客志向文化を形成する

  1. レベル1 トップのコミットメント
    • 顧客が先か利益が先か、問題があった時に問われる顧客志向
    • 官僚的組織から顧客志向組織へと変貌したオーストラリアの元国有企業
  2. レベル2 顧客ロイヤルティチームを作る
    • CCO(最高顧客価値責任者)の設置
    • 業界最高NPSをたたき出すUSAのCCOウェイン・ピーコック
  3. レベル3 顧客ロイヤルティの共通認識を創出
    • ストーリーの力をグローバルに活用 – ヤマト運輸
  4. レベル4 顧客志向活動への動機づけ
    • 人は自分がされたように人に接する – 社員エクスペリエンス向上
    • 現場に権限を渡す
    • 人事評価への反映は慎重に
    • 金銭による動機づけ
    • 金銭以外での動機づけ
  5. レベル5 顧客ロイヤルティ活動の定着
    • 研修
    • 顧客”思考”の習慣化
    • 評価項目の見直し
    • 管理部門も例外ではない – 採用を工夫するサウスウェスト航空
    • 顧客フィードバックの共有
    • 顧客志向で業界慣習を覆し日本一の来店者数を実現 – アットコスメストア

おわりに

 
売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門

売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門

遠藤 直紀(著)武井 由紀子(著)
日本実業出版社

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