飯野謙次(著)
日経BP
本の詳細
ミスや失敗、とくに不祥事に関しては、私たちはつい、「ばれないだろう」「大ごとにはならないだろう」「うまくいくだろう」などと、根拠がないまま都合よく考えてしまいがちです。
ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?/飯野謙次(著) 日経BPより
これは、人間の脳が持つ「正常性バイアス」という機能です。大雨によって避難指示が出ていても、「うちは大丈夫だろう」「まだ大丈夫だろう」と避難せず、いよいよ危機が近づいてから救助要請するようなもので、どんな人にもある性質です。
脳にはこんな性質があるということを自覚したうえで、あえて最悪の事態を想定し、必要なら誰かの助けを得て、その最悪の輪を縮めていくイメージでミスや失敗と向き合いましょう。
仕事上のミスは、自分のものではありません。グループのもの、部署のもの、組織のものです。
ひとりで抱え込んで考え出した対処法は、その場は無事に収まったように見えても、組織にとっては望ましくない方向を向いているかもしれません。
また別の人、とくに上司が対応したほうが、全体としてのコスト、つまり人件費が下がることは当然考えられます。会社員であるならば、あなたの作業にも人件費が伴うことを、忘れてはなりません。
「自分ひとりで対応できても、しないほうがいい」という場合も往々にしえあるのが、社会人のミス・失敗なのです。
新しくたくさんのことにチャレンジしている人や、日々忙しくしている人ほど、ミスや失敗のリスクにさらされているといえます。
そう、一般的に「評価の高い人」ほど、実はたくさんのミスや失敗をしているのです。
たくさんのミスや失敗をしていながら、彼らの評価が高いのには、理由があります。ミスや失敗を通して成功をつかみ取れる人、というのは、
- ミスや失敗に対する最初の行動が的確
- ミスや失敗から立ち直るのがうまい
- ミスや失敗を、経験として蓄積できる
- ミスや失敗から、成功する仕組みをつくれる
という流れを、自然に実践しています。これは、科学の研究に置き換えて考えるとわかりやすいと思います。
読んでおきたいコールセンター参考書|仕事のミスをなくすための参考書
目次
はじめに「ミスしたのに、評価が上がる」仕事術
「私、失敗しないので」……100%成功は実現可能か
失敗を恐れずチャレンジするための「本書の結論」
ミスや失敗は「急成長」のための劇薬
工学の専門分野「失敗学」が、皆さんの仕事に役立つ理由
起こってしまったミスや失敗も、必ずプラスに変えられる
1章 ミスしてしまったとき、「評価される人」はこう対処する
ミスや失敗を「チャンスの宝庫」にするために
なぜ「些細な失敗」が、こんなに炎上してしまうのか
ミスや失敗から「かけがえのない学び」を得る3ステップ
ステップ1 「咄嗟の反応」のレベルを上げるには?
①冷静になる――「人間力」と「経験値」は変えられない。ならば……
上塗りするくらいなら、「何も見せない」作戦
②「自分が」という気持ちを捨てる――ひとりでできることは少ない
「所要時間1分」――咄嗟の反応は「心の中」の問題
ステップ2 効果的な対応をする
③情報発信と謝罪――被害を最小限に食い止めるために
第一報で伝えるべきこと、伝えてはいけないこと
情報発信と謝罪のまとめ
本人が対処に当たらないほうがいい、という指示は「いじめ」!?
④対応策の検討と実行――ミスや失敗はあくまでも、組織のものと心得る
ミス対処のコツをプライベートで活用するには?
ステップ3 将来に生かす
⑤再発防止――反省し、仕組みから変える
「ミス」と「失敗」は同じもの?
2章 だから、乗り越えた先に「急成長」が待っている
これが、急成長をもたらす「目のつけどころ」
なぜ「多くの失敗」が、単なる叱責で終わるのか
こうしてミスは「忘れ去りたい過去」になる
失敗を学びに変える「唯一の方法」とは?
ほとんどの失敗には理由があるが、成功の多くには理由がない
だから、一流ほど失敗を「歓迎」できる
ミスや失敗を通した「成長」の正体
①不十分な仕事のやり方をアップデートできる
②観察力・分析力が必然的に上がる
③計画力・学習力・伝達力が高まる
ミスや失敗が生み出す副次的な効果
ミスが人間関係をつなぐ
他人のミスや失敗に寛容になれる
失敗がもたらす「チームの団結力」への嬉しい効果
ミスや失敗は、人間らしさの源
Column1 「ミスや失敗を笑われるのが、つらい」という人へ
3章 問題点をピンポイントで見抜く
~ミスを通して「観察力」「分析力」をつける方法~
実践! 本質を見抜く力を努力なしで身につけよう
ミスや失敗を正しく観察し、分析する「まんだら」活用法
だから、最速で「頭のキレ」を上げられる
Column2 ラズベリーパイのすすめ
4章「圧倒的な結果」を生み出す「計画の質」の高め方
~ミスを通して「計画力」をつける方法~
「計画不良」のミスや失敗を根絶やしにするには?
「計画不良」の改善が、仕事力大幅アップにつながる理由
「間に合わない!」「いつもバタバタ」……計画余裕不足
「できると思ったのに」「これ、私がやるの!?」……人材能力不足
「急に言われても!」「聞いてないよ!」……計画外作業発生
「まさかこのタイミングで!?」「今ですか!?」……計画外外乱
「計画外」に振り回されない2つのポイント
ミスも失敗もできなくなる「いい計画」の立て方
①「思考展開図」を使いこなそう
②細切れにした課題それぞれに重要度をつける
③課題は可能な限り「細切れ」に
④思考展開図に従って実行する
⑤新たなステップの展開図へ
Column3 「消費税8%→10%」の失敗学
5章「何歳になっても成長し続ける人」は何が違うのか?
~ミスを通して「学習力」をつける方法~
学習力こそ、もっともわかりやすい成長の指標
「知りませんでした」「わかりません」は学習機会欠如のあらわれ
「言われてみればそうでした」「忘れていました」……学習内容忘却はなぜ起こる?
「気付きませんでした」「力不足でした」……応用力不足を克服する方法
「勉強しなきゃとは思うのですが」「時間がなくて」は結局、学習意欲欠如
学習不足を解消するための「大人の学習意欲」の高め方
Column4 ラズベリーパイをめぐる2つのミスを克服する
6章 仕事をスピードアップでき、関係性までよくなる「伝え方」
~ミスを通して「伝達力」をつける方法~
コミュニケーション力が、すべての仕事力に直結する理由
①「メールが多すぎる」問題
②「指示があいまい」を防ぐには?
③「了解メール」をめぐるあれこれ
④「あいまい指示」からの誤解の誘発の防ぎ方
⑤「重要なことこそ、なぜかメールに書かない」問題
⑥メール送信に関するミスは、せめて早く挽回する
「伝達不足」の被害を最小限に済ませる究極の考え方
7章「どんなうっかり者でも、うっかりできない」仕組みをつくる
~ミスを通して「注意力」を見直す方法~
「うっかりミス」で背筋を凍らせるのは、もうやめよう
「ぼーっとしてて」「つい気になって」……注意散漫させない法
「うっかりしてました」……失念を味方につける
「よそ見してました」「そぞろでした」……状況誤認知は「しない」と決める
ヒューマンエラーは「システム改善」の絶好のチャンス
Column5 システム化=コンピュータ化ではありません
8章 なぜ「ミスを正しくシェアする」だけで、あなたの評価が上がるのか?
~ミスを通して、組織と人を育てる方法~
一流の人事担当、有能なリーダーだけが知っている「失敗」と「ミス」の活かし方
経験値を正しく蓄積する「ミスのシェア」テクニック
①外部とのメールを共有する
②日報は有効か?
③データベース化する
「他人のミス」はもっとも効率のいい成長の手段
「記憶の風化」でフリダシに戻ってしまわないために
「失敗やミスがなくなることこそ、人生最大のリスク」と私が断言する理由
巻末付録 ミスや失敗を評価につなげるための10のマインド