ダイヤモンド社人材開発編集部(著)
松尾睦(監修)
ダイヤモンド社
本の詳細
理想的なのは、ガードレール型の指導です。つまり、指導者が目標を明示しますが、そこに至る道筋は一定の範囲内で部下の裁量にまかせるというやり方です。
目標を見失うことなく、部下に「考える余地(Space To Think)」を与えることが可能となります。部下が許容範囲から逸脱しそうになったら、指導者がアドバイス等を行い、逸脱を防止します。つまり、指導者がガードレールの役割を果たすわけです。
組織がOJTに期待しているのは、部下の成長だけでなく、指導者・部下双方の成長です。
指導者はOJT=育成経験を通じて、マネジャーに求められる「目標共有力」を強化することができます。「目標共有力」とは、ビジョンや目標を明示し、それを組織に浸透させ、メンバーを巻き込む能力です。
優れたマネジャーは経験を通して「情報分析力」「目標共有力」「事業実行力」という3つの能力を習得していた、という結果が出ています。
このうち「目標共有力」を高めている人は、「部下を育成した経験」を積んでいる人であることがわかっています。
現場における「指導の成功例」を集めて体系化。
「目標設定」「計画立案」「計画の実行」「困難への対処」「評価」など、OJTの指導ステップ別に、上司や先輩が直面する困難や問題点を「状況」として紹介し、「対処方法」として指導法を説明しています。
目次
序章
第1章 OJTの土台づくり
- シーン1 OJTについて、いまひとつ本気になれない
ベストプラクティス1 OJTは優れたマネジャーが備えるべき能力を強化する機会であると認識する - シーン2 OJT指導の拠り所がない
ベストプラクティス2 自分たちの仕事の持つMVP(使命・価値・誇り)を部下に伝える - シーン3 OJT指導をしても、部下の気づきが少ない気がする
ベストプラクティス3 「考える余地」を与える「ガードレール」型の指導を行う - シーン4 若い部下との間に、信頼関係を築くのが難しい
ベストプラクティス4-1 ラポールを構築するために、「愛してるの原則」を実践する
ベストプラクティス4-2 OJT指導者の対人魅力を高めるコミュニケーションを心がける - シーン5 部下が本当に成長するかどうか、自信が持てない
ベストプラクティス5 上司が部下の成長を信じれば、確実に部下が成長する(ピグマリオン効果) - シーン6 部下のやる気がなかなか引き出せない
ベストプラクティス6 上司・部下双方が納得する成長ゴールを設定する - シーン7 自分一人では育成の負担感が大きすぎる
ベストプラクティス7 育て上手のOJT指導者はOJTを「線」ではなく「面」で展開する - シーン8 新人の部下が職場になじめていない
ベストプラクティス8 部下の「居場所」を確保してあげることが成長意欲をかきたてる
第2章 目標設定
- シーン9 挑戦的な目標(ストレッチ目標)を部下本人に腹落ちさせられない
ベストプラクティス9-1 本人と話し合い、ストレッチ目標を「やるべき目標」「できる目標」「やりたい目標」にする
ベストプラクティス9-2 適切なレベルのストレッチは本人の現有能力の1.2〜1.3倍が目安
ベストプラクティス9-3 ストレッチ目標への挑戦を「ストイックな修業」ではなく「エンジョイメント」させる - シーン10 多様な目標を整理させることができない
ベストプラクティス10 短期目標と中長期目標に分け両者を常に意識させる - シーン11 目標は整理されているが成果が上がらないように思える
ベストプラクティス11 成果目標(業績目標)に加えて学習目標も意識させる - シーン12 ストレッチ目標を実現可能なステップに落とし込めないでいる
ベストプラクティス12 仕事を因数分解することで目標の実現可能性を部下に実感させることができる - シーン13 成長への期待感をうまく伝えることができない
ベストプラクティス13 期待の言葉に、励まし、後押し、願いの言葉を添える
第3章 計画立案
- シーン14 仕事を通じた成長をイメージさせることができない
ベストプラクティス14 仕事の全体像や背景を説明し、本人に仕事への「意味づけ」をさせる(センスメイキング) - シーン15 仕事で起こり得る事態を予見させることができない
ベストプラクティス15 計画のシミュレーションで予見させる - シーン16 仕事の優先順位を意識させることができない
ベストプラクティス16 仕事の「緊急度」と「重要度」を意識させる - シーン17 権限委譲(任せること)ができない
ベストプラクティス17-1 まずは「任せてみる」、能力アップしたら「任せきる」
ベストプラクティス17-2 「任せる」ことはしても「任せっぱなし」にしない
ベストプラクティス17-3 任せ上手」の5原則を実践する - シーン18 再挑戦への動機づけができない
ベストプラクティス18 マインド・リセットさせた上で、「失敗は成功への通過点である」ことを本人に認識させる - シーン19 新入社員の作業時間見積もりが甘い
ベストプラクティス19 時間を基準に「わかっている」と「実際にできる」のギャップを認識させる - シーン20 部下に手本を示したいが望む通りに受け入れられない
ベストプラクティス20 「型」を学ぶことの重要さを教え、応用させ、抜けさせる - シーン21 仕事を細かく指示したら、本人の意欲が低下した
ベストプラクティス21 本人の創意工夫に任せる部分を意図的につくる
第4章 計画の実行
- シーン22 日々の行動を観察できていない
ベストプラクティス22 「私は常にあなたのことを見守っている」というサインを部下に送る - シーン23 声をかける時機を逸してしまう
ベストプラクティス23-1 毎日、決まった時間に声をかける
ベストプラクティス23-2 部下に声かけしやすい仕組みをつくる - シーン24 業務の進捗を正しく確認できない
ベストプラクティス24 定期的なミーティングで部下の話をしっかり「聴ききる(Listen,Listen,Listen)」 - シーン25 考えて実行させたり、臨機応変に実行させることができない
ベストプラクティス25-1 効果的に発問し、本人の考えを述べさせる
ベストプラクティス25-2 丸投げ型ではなく、提案型で相談させる
ベストプラクティス25-3 場合によっては、成果よりも経験を優先する - シーン26 進捗を管理しすぎたら、部下がやる気を失った
ベストプラクティス26 過度の管理志向は部下を潰しかねないので避ける - シーン27 何も考えず、漠然とルーチンワークをこなしている
ベストプラクティス27 行動しながら内省させ、内省しながら行動させる
第5章 トラブルへの対処
- シーン28 トラブルを抱えた部下に、どう接するべきか
ベストプラクティス28 本人の気持ちを落ち着かせることを優先させる - シーン29 相談しやすい雰囲気をつくることができない
ベストプラクティス29 「忙しいから後にして」「忙しいから、任せる」は避ける - シーン30 トラブルの経過や現状をうまく共有できない
ベストプラクティス30-1 トラブルの全体像を「見える化」する
ベストプラクティス30-2 事実と意見を切り分け、本人の思い込みを解きほぐす - シーン31 上司として部下のトラブルにどのくらい関与すればいいか迷う
ベストプラクティス31 部下の能力によって関与する度合いを変える - シーン32 本人が落ち込み、自信を失いかけている
ベストプラクティス32 「やればできる」という自己効力感を高める
第6章 評価
- シーン33 効果的なフィードバックの流れ、機会がわからない
ベストプラクティス33-1 「フィードバックの4原則」を実践する
ベストプラクティス33-2 成果の大小にかかわらず業務遂行を承認し、ねぎらいの言葉をかける
ベストプラクティス33-3 さまざまなフィードバックの機会を設定する - シーン34 効果的にほめることができない
ベストプラクティス34-1 「何が良かったのか」「どこが伸びたのか」を具体的にほめ、本人に正しく認識させる
ベストプラクティス34-2 「才能」よりも「努力」をほめた方が部下は伸びる
ベストプラクティス34-3 メールや日報コメントなどで、ほめ言葉を形に残す - シーン35 効果的に叱ることができない
ベストプラクティス35-1 感情に任せて怒っても部下の成長につながらない(叱れども怒らず)
ベストプラクティス35-2 叱る」際には、前後で「ほめる(励ます)」ことを忘れない(サンドイッチ話法)
ベストプラクティス35-3 客観的事実に基づき、叱る理由を明示する - シーン36 部下に深く内省させることができない
ベストプラクティス36-1 4つの問いかけで深く内省させる
ベストプラクティス36-2 結果に至るプロセスをしっかり検証する
ベストプラクティス36-3 「うまくいかなかったこと」ばかりではなく、「うまくいったこと」にも着目させる
第7章 学びの抽出
- シーン37 業務経験の振り返りから、教訓をうまく引き出す指導ができない
ベストプラクティス37 「考える余地」を与える指導でマイセオリーの創造を支援する - シーン38 「学び」につながるヒントをうまく提供できない
ベストプラクティス38-1 OJT指導者の経験談(成功体験・失敗体験)をヒントとして与える
ベストプラクティス38-2 取り組みを「見える化」して気づかせる
ベストプラクティス38-3 新たな視点・視野・視座を提供し、気づかせる
ベストプラクティス38-4 部下が繰り返し発する言葉を糸口にヒントを提供する - シーン39 部下から的確な言葉を引き出すことができない
ベストプラクティス39 経験した出来事のみならず、その特徴も書き出させる - シーン40 成長の実態を測定したり、上手に伝えることができない
ベストプラクティス40 成長ゴールに対する達成度合いを基準に認識させる
第8章 ОJT指導の実践例
- 事例1 部下が自分で考えない(当事者意識がない)
- 事例2 部下の行動が受動的である(余計な仕事を増やしたくない)