基礎からはじめる職場のメンタルヘルス ― 事例で学ぶ考え方と実践ポイント

基礎からはじめる職場のメンタルヘルス ― 事例で学ぶ考え方と実践ポイント

基礎からはじめる職場のメンタルヘルス ― 事例で学ぶ考え方と実践ポイント

川上憲人(著)
大修館書店

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本の詳細

ある会社の支社では、合計10名の従業員が働いていた。ある時、支社長が長時間労働でうつ病になって倒れ、次長が支社長分も含めて2人分働いたところ、過労でうつ病になって休業してしまった。さらにその下の課長が、支社長分、次長分も含めて3人分の仕事を担当して働いたところ、過労でうつ病になり出社できなくなった。この支社の業務は停滞し、支社を閉鎖するという結果になってしまった。

特に重要な業務、他にも代わりのいない業務を担当している人の休業は、経営活動そのものに支障が生じます。メンタルヘルスに関わる問題で休業している従業員がいる職場では、その他の従業員の業務量が増え、その人たちのメンタルヘルスが悪化し、さらに生産性の低下が進むことになります。

働く人には、落ち込みや不安といった気分、アルコールの問題、うつ病などの精神的な病気など、メンタルヘルスに関わる問題が起きることがあります。

仕事や生活に影響が出て、集中力が低下し、大事な責任や役割を十分こなせなくなり、ミスも増えます。少しがんばっただけで強い疲労感におそわれ、仕事や家事が続けられなくなってしまいます。回復にしばらく時間がかかり、ひどい場合には数ヶ月以上休んで回復に努めなくてはならない場合もあります。たとえばうつ病になると、回復するまでに平均で6ヶ月以上かかります。

働く人のメンタルヘルスに関わる問題は、本人だけでなく、家族にも影響します。本人のメンタルヘルスの問題による休業が長引けば、家族の経済的な生活が不安定になるかもしれません。本人が仕事による過度なストレスを家庭に持ち帰れば、家族との関係に影響が出るかもしれません。

自身や希望を持って働けている、すなわち、良いメンタルヘルス状態にある従業員は、職場で起きる様々な変化にも工夫して対応し、積極的、自律的に業務を遂行し、会社を支えてくれる存在となるはずです。変化の時代にある会社にとって、従業員のメンタルヘルスを守ることは、大事な経営戦略の1つです。

目次

第1章 働く人のメンタルヘルスが大事な理由

1 働く人にとって、大事な理由

2 会社にとって、大事な理由

  1. 生産性と直結している
  2. 法律で求められていることがある
  3. 労働災害や民事訴訟の未然防止

3 ポジティブなメンタルヘルスが大事な理由

  1. ネガティブからポジティブへ
  2. ポジティブなメンタルヘルスに着目する利点

コラム 教員のストレスとメンタルヘルス

第2章 働く人のストレスとメンタルヘルス不調

1 働く人のメンタルヘルス不調の実際

  1. メンタルヘルス不調とは
  2. 働く人はどのくらい心の病気にかかっているか

2 働く人のストレス

  1. ストレスとは何か
  2. 働く人のストレスの現状
  3. 仕事によるストレスと理論モデル
  4. 仕事によるストレスと関連のある健康問題

3 働く人における心の病気

  1. 心の病気とは何か
  2. 心の病気の種類
  3. 働く人における自殺

4 精神障害等による労働災害や過労自殺の民事訴訟

  1. 精神障害等による労働際学
  2. 脳・心臓疾患による労働災害
  3. 過労自殺の民事訴訟

第3章 心の健康を保つための活動

1 メンタルヘルス不調への気づきと相談対応

  1. メンタルヘルス不調への相談対応の考え方
  2. 管理監督者が行う相談対応
  3. フローチャートで見る管理監督者の相談対応
  4. 人事労務担当者が行う相談対応の仕組みづくり
  5. 相談者の問題を分析し、対応を考えるためのプロのスキル

2 職場復帰の支援

  1. メンタルヘルス不調で休業した従業員の職場復帰
  2. 管理監督者は、職場復帰にどのように対応するか
  3. 人事労務担当者が行う職場復帰の体制と手順書づくり

3 自殺予防のために

  1. 自殺の可能性のある部下への対応
  2. 自殺発生後の対応

4 職場環境改善によるストレス対策

  1. 職場環境などの評価と改善の考え方
  2. 調査票による職場のストレスの評価
  3. 管理監督者が行う職場環境の改善
  4. 従業員参加型の職場環境改善
  5. 人事労務担当者が行う職場環境改善の計画的推進

5 予防のためのストレスマネジメント

  1. 認知行動療法に基づいたストレスマネジメント
  2. リラクセーション法
  3. 生活習慣

第4章 職場のメンタルヘルスの計画的推進

1 職場のメンタルヘルス指針の概要

  1. 指針に示されたメンタルヘルス対策の考え方
  2. 衛生委員会で検討すべきこと
  3. 心の健康づくり計画
  4. 4つのケアとは何か
  5. 特に重要な4つの活動と個人情報の保護

2 事業場内の体制づくり

  1. 事業者に必要性を説明する
  2. 衛生委員会で検討する
  3. 関係者の役割分担を決める
  4. 精神科などの外部の機関を活用する

3 心の健康づくり計画の策定

  1. 心の健康づくり計画に含まれるべき内容
  2. 年次計画を策定する
  3. 評価の方法を計画する
  4. 文書化し周知する
  5. 事業場における心の健康づくり計画の実例

コラム 学校の心の健康づくり計画

4 ストレスチェック制度

  1. ストレスチェック制度とは
  2. ストレスチェック制度の実施方法
  3. ストレスチェック制度を効果のあるものにする
  4. 記録の取り扱いに注意する
  5. 不利益取り扱いをしない

5 メンタルヘルス教育研修と情報提供

  1. 管理監督者向け教育研修・情報提供
  2. 従業員向けの教育研修・情報提供
  3. メンタルヘルス教育の企画と実施

コラム メンタルヘルス研修を学校でも

第5章 職場のポジティブメンタルヘルスへ

1 職場のポジティブメンタルヘルスの動向

  1. 職場のポジティブメンタルヘルスへの関心の高まり
  2. ワーク・エンゲイジメントの考え方
  3. 職場のコミュニケーションや一体感の重要性

2 健康いきいき職場づくり ― 日本型ポジティブメンタルヘルスの考え方

  1. 「健康いきいき職場」とは何か
  2. 「健康いきいき職場」の条件

3 職場のポジティブメンタルヘルス対策の実際

  1. 会社レベルでの活動
  2. 部署レベルでの対策
  3. 経営とポジティブメンタルヘルスを支援する活動

参考文献
おわりに

 
基礎からはじめる職場のメンタルヘルス ― 事例で学ぶ考え方と実践ポイント

基礎からはじめる職場のメンタルヘルス ― 事例で学ぶ考え方と実践ポイント

川上憲人(著)
大修館書店

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