下園壮太(著)
講談社
本の詳細
「相談しがいのない人だ」と思われていませんか?
「相談を受ける」という作業は、現代社会においてはけっこう難しい精神活動になっているのです。「相手のためを思って、真心で接すれば必ず相手に通じる。最後にはわかってくれる。相手に感謝されるはずだ」というのは、理想論であり、甘い思い込みだと言わざるを得ません。そういう思い込みにとらわれている限り、けっして「相談しがいのある人」にはなれないのです。
クライアント(相談者)の中には、私のもとを訪れる前に、周囲に相談してみたという人もいます。しかし、「相談したけれど、何の助けにもならなかった」という人が多い。むしろ、相談したことで逆に「追いつめられたり、傷つけられた」と訴えるケースもあるのです。
私のように職場で働くカウンセラーには、そのような場合に、相談を受けた人、たとえば上司や友人に話を聞く機会もあります。
彼らに話を聞いてみると、悩んでいる人を支援しようという気持ちは非常に強いのですが、その熱意が空回りしているようです。むしろ熱心に関わろうとするほど、逆に相手を苦しめてしまうという矛盾した状態になっています。
彼らは、悩んでいる人にとって結果的に「相談しがいのない人」になってしまったのです。
相談は、親子関係だけでなく、夫婦関係、恋人関係、職場での上下関係、友だち関係などあらゆる人間関係のなかで生じ得ます。
意中の異性が困っているとき、あなたが力になってあげられれば、相手の気持ちはあなたに傾くでしょう。
部下が本当に困っているとき、助けてあげられれば、部下はあなたのことを信頼し、あなたについてきてくれるでしょう。
悩んでいる友だちを上手にサポートできれば、お互いを親友と呼べる関係になっていることに気がつくでしょう。
相談は人間関係をより良いものにする大きなチャンスなのです。
実際的な場面で、自分の技術を磨いてきました。また、何かトラブルがあったときに現地に赴いてカウンセリングをするという私の任務から、私のカウンセリング場面は、ほとんどが一回勝負です。
そのような場面では、従来のカウンセリング技法ではあまり語られてこなかったようなポイントが重要になってきます。たしかに普通のカウンセラーの環境とは違うかもしれませんが、一般の方々が相談を受ける場面には、むしろ近い環境なのだろうと考えています。
本書では、そんな私の実践的なコツや考えを紹介していきたいと思うのです。
目次
はじめに
第1章 相談しがいのない人たち
- 【事例 1】相談が説教になってしまった
- 【事例 2】妻の相談をすぐに問題解決しようとした
- 【事例 3】はげますつもりが落ち込ませてしまった
- 【事例 4】プロも陥る「相手のためになる」という思い込み(1)
- 【事例 5】プロも陥る「相手のためになる」という思い込み(2)
第2章 なぜうまく相談にのれないのか ―― 問題解決指向のアプローチの限界
- 1 すぐに問題解決をめざそうとするアプローチには限界がある
- 2 相談してくる人には三つの層がある
- 【キーワード 1】 「うつ的思考」
- 3 悩みの深い人には「感情のトラブルの解消」が必要
- 4 「話を聞いてほしい」という欲求を満たす
- 【キーワード 2】 「表現欲求」と「共感確認欲求」
- 5 直接的なアドバイスは悩みの深い相談者を傷つける
- 6 悩みの深い相談者の「相談するときの不安」をわかってあげる
- 【キーワード 3】 「裏メッセージ」
- 7 普通の相談でも「5分間相談」では失敗する場合がある
- 8 男性が女性の相談を受けるときに注意したいこと
- 【キーワード 4】 「支援者癖」
第3章 どんな言葉をかけたらいいか ―― 効果的なメッセージの与え方
- 1 メッセージコントロールカウンセリング
- 2 「がんばれ」だけでは勇気づけられない!
- 3 まずは安心感を与えるメッセージから
- 4 「人」がメッセージを与える意味
- 5 メッセージは言葉で伝えるだけではない
- 6 「1時間相談法」三つの実践ステップ
第4章 実践ステップ1 相談者の味方になる
- 1 相談者の味方になるメッセージ
コラム プロでも見落とすメッセージ、「苦しかったね」
- 2 メッセージの与え方 ―― まず三〇分、徹底的に聞く
- 3 メッセージの与え方 ―― 相談者の考え方や感じ方を教えてもらうつもりで
- 4 三〇分聞き続けるテクニック(1)うなずきの魔法
- 5 三〇分聞き続けるテクニック(2)要約・質問の魔法
- 6 三〇分聞き続けるテクニック(3)自分の声をよく聞く
コラム 相談 = 問題解決ではない! 問題に触れなくても勇気づけられる!
第5章 実践ステップ2 自信を取り戻させる
- 1 自信を取り戻させるメッセージ
- 2 言い訳を感じたら「味方になる」作業に戻る
コラム 江原さんのメッセージコントロール
第6章 実践ステップ3 解決のヒントを与える
- 1 解決のヒントを与えるメッセージ
- 2 メッセージの与え方 ―― 相談者が本当に望んでるメッセージとは
- 3 メッセージの与え方 ―― 環境を整え、刺激を与えなさい
- 4 解決のヒントを与えるテクニック(1)テーブル広げ
- 5 解決のヒントを与えるテクニック(2)「アドバイス・どう?」の魔法
- 6 解決のヒントを与えるテクニック(3)シュミレーションを手伝う
- 7 相談者にすでに案があるときのシュミレーション
- 8 相談者が深く悩んでいるときのシュミレーション
- 9 「いっしょに困る作業」で味方の立場を守りきる
第7章 うつ状態の人への対応
- ポイント1 「味方になる」段階を重視する
- ポイント2 「こうすればいいよ」までのメッセージの与え方
- ポイント3 根本的な対処が遅れることのないように
第8章 ケーススタディ「1時間相談法」の成功例
おわりに
下園壮太(著)
講談社