堀紘一 (著)
ダイヤモンド社
本の詳細
リーダーの仕事は、製品を開発し、作ることではない。商品を売ることではない。会社が行っている事業の個別の仕事をすることではなく、その事業をうまく進めるための作戦を決め、社員に周知徹底させて、速やかに実践させることである。
リーダーシップの本質 改訂3版/堀紘一(著)ダイヤモンド社より
強いチームになるためには、優秀な選手が必要だが、どれだけ優秀な選手がそろっていてもそれだけでは真に強いチームにはならない。最強の四番打者が一試合に四安打打っても、その前に走者が出ていなければ点は取れない。最強のエースにも失投がある。キャッチャーのリードが悪ければ、ピンチで逆転されるかもしれない。
それはみな、当の選手より監督の責任である。
同じように、他のすべての組織もリーダー抜きには強くなれず、またリーダー次第で強くも弱くもなるのである。したがって、もしその会社がうまくいっていないとしたら、最大の原因はリーダーにある。
原理原則をそのまま適用してもうまくいかない状況に直面したとき、現場は迷う。このとき、リーダーは状況を早く的確に把握し、あくまでも原理原則を貫くのか、方針転換するのかを改めて決定し、速やかに指令しなければならない。
前線で重要な任務を遂行している社員が迷う状況に直面するとき、リーダーはその迷いを振り払ってやる必要がある。
コンサルタント業務に携わっている社員からの相談を受けることがよくあった。二人ほど来て、担当業務の決めかねていることについて、どうしたらいいかと言ってくる。
二人とも優秀なコンサルタントである。だが選択肢のどちらかを選ぶかに悩んでいる。自分たちがいいと思っているものはあるが決め手がない。抱えている案件を一通り説明した末に、彼らは「どうしましょうか」と言う。そういうとき私は決まってこんな言い方をしたものだ。
「どうしましょうかと言うが、君たちは二人とも頭がいい。この案件についてはもうかなりの時間も使っているだろう。その君たちが悩んで答えを出せないものに、私がこの場で聞いて正解を出せるはずがない。問題は君たち自身がどちらをいいとおもっているかだ。そちらでいこうじゃないか。万が一失敗したとしてもその責任は私が取る」
そういうとき私は、幹部会や取締役会、経営会議でそのその旨報告し、彼らが発案者であり、私が責任をもって決定すること、仮に失敗したとしてもその責任が私にあることを明言する。
強い組織をつくるためには、直接戦う人の迷いを吹っ切ってあげる必要がある。また、強い組織をつくるには下位概念の人に責任を押しつけないことである。
真のリーダーシップとは何か
「リーダーシップは学んで掴み取るものである。」
「リーダーシップは経験科学に裏付けされた哲学的方法論である」
「リーダーシップは学んで掴み取るものである」
「人を育てるためにも、下の人ができることを上の人がしてはならない」
「リーダーが果たすべき仕事の第一は、目的またはゴールを設定することである。第二に現在地がどこかを認識することである。第三に組織としての活動をしていく時間の経過の中で、どのような環境変化があるかを読むことである。第四に、この三つのことをした後に、どういう戦略をとって現在地から目的地までたどりつくかを策定することである。第五に、直接任務にある者を励まし、叱咤して実行することである」
「自然に人がついてくるのが真のリーダーである」
本書は、三菱商事、ボストンコンサルティンググループ社長を経て、ドリームインキュベータを創業した堀紘一氏が、リーダーシップ論を語った名著の改訂3版です。
目次
序章 – 真のリーダーシップとは何か
これからの社会ではリーダーシップが不可欠になる
リーダーシップは学んで掴み取るものである
第I部 リーダーシップの本質
第1章 リーダーという存在
1-1 会社がうまくいっていない最大の原因はリーダーにある
1-2 リーダーシップは経験科学に裏づけられた哲学的方法論である
1-3 リーダーシップの本質はその理念にある
1-4 リーダーの果たすべき五つの役割
1-5 トップと中間管理職の間は深い溝で隔てられている
1-6 部下にできることをリーダーはしてはならない
1-7 リーダーの権威は人間性と行為によって生まれる
1-8 自然に人がついてくるのが真のリーダーである
1-9 リーダーシップという最大権力の行使
1-10 リーダーは最高の責任を負う最終的存在である
1-11 リーダーはつねに孤独の中で責務を全うしなければならない
第2章 組織とリーダーシップ
2-1 組織とは何か
2-2 組織の目的とは何か
2-3 何を存在意義とするか
2-4 組織を成長させる力
2-5 収益を上げる基本要素
2-6 組織の目的を達するためには戦略を学ばなければならない
2-7 目的を達するための組織
2-8 リーダーは組織が持つ目的達成のための最短の方法論を選択し、そこに構成員を向かわせなければならない
2-9 共通の夢が組織を生きた存在にする
2-10 経営資源としての人、経営資源としての組織
2-11 パートナーを選ぶ
2-12 人事はリーダーのメッセージである
2-13 リーダーと企業カルチャー
2-14 組織の規模とリーダーの大きさ
2-15 起業してもいい条件
2-16 グローバリゼーションとグローバル・リーダーの条件
2-17 リーダーはオンリーワンを産み出す環境を整えなければならない
第3章 リーダーの仕事
3-1 リーダーが果たすべき五つの仕事
3-2 夢を語らないトップは真のリーダーではない
3-3 リーダーは手本を示す範でなければならない
3-4 リーダーはチャンスを与え、扉を開く先達とならなければならない
3-5 リーダーは真に考えることの意味を悟らせ、考えさせる師でなければならない
3-6 一つの誉め言葉、一つの叱責が人と組織の命運を左右する
3-7 リーダーは選択に当たって組織の構成員の納得を得ようとしてはいけない
3-8 リーダーは生産的な摩擦を排除せず、生かす環境づくりに努めなければならない
3-9 リーダーは明日を語れなければならない
3-10 リーダーはつねに勝たなければならない
3-11 リーダーは自らの行動によって部下を自発的に動かさなければならない
3-12 人を成功するビジネスパーソンに導く五つの条件
3-13 リーダーは組織の成員を問題解決型に導かなければならない
3-14 リーダーはもっともふさわしい後継者を育て、あるいは抜擢しなければならない
3-15 リーダーは引き際を誤ってはならない
第II部 リーダーシップの方法
第4章 状況判断と意思決定
4-1 リーダーに必要な四つの能力
4-2 状況判断力と意思決定力がすべての決め手となる
4-3 リーダーはつねに情報の本質を読み取らなければならない
4-4 意思決定は組織行動のすべてを規定する一瞬である
4-5 意思決定に決められた解答はない
4-6 選択を誤らない意思決定の方法
第5章 リーダーシップの表現と技術
5-1 リーダーは冷静な情熱家でなければならない
5-2 リーダーはあい矛盾する資質を併せ持たなければならない
5-3 リーダーはつねに明るく自分を表現しなければならない
5-4 リーダーはつねに価値観を語り続けなければならない
5-5 リーダーは自ら責任を負って新規事業に取り組まなければならない
5-6 リーダーの語る夢は実現への道筋が示さなければならない
5-7 リーダーの意思決定はメンバーを納得させる透明性を持たねばならない
5-8 意思決定できない理由をつめに明らかしなければならない
5-9 朝令暮改を恐れるな
5-10 リーダーは環境変化の中で守るべきを守り、変えるべきを変えなければならない
5-11 リーダーが求めるべき採用の条件
5-12 リーダーは部下の迷いを取り除かなければならない
5-13 苦境にあってリーダーは装わなければならない
5-14 リーダーは自らの行動倫理を認識し、進化させなければならない
第6章 リーダーに求められる力
6-1 時代を見通す先見力
6-2 情報を読み解く力
6-3 最も良く考える人としての深い思考力
6-4 自ら豊かに発想し、自分の中にない発想を柔軟に受け止められる力
6-5 自分自身を把握し、コントロールする力
6-6 リーダーは風のリズムを的確につかまえなければならない
6-7 リーダーは運を味方につけなければならない
6-8 リーダーは撤退の時機を見誤らず、速やかに収拾させなければならない
第7章 リーダーシップを学ぶ
7-1 二十一世紀のリーダーは速やかにリーダーシップを身につけなけばならない
7-2 組織はリーダーシップを学ぶ不可欠な場である
7-3 成功するリーダーは基本がしっかりしている
7-4 財務の本質をつかめ
7-5 利害を超えた独自のネットワークを持て
7-6 スピード処理、効率処理を徹底させる
あとがき
巻末付録 – リーダーシップを学ぶ人のための十冊の本
1 エーリッヒ・フロム「愛するということ」
2 ヴィクトール・E・フランクル「夜と霧」
3 チャールズ・ダーウィン「種の起原」
4 戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎「失敗の本質 – 日本軍の組織論的研究」
5 福沢諭吉「学問のすゝめ」
6 宮本常一「忘れられた日本人」
7 山本七平「「空気」の研究」
8「きけわだつみのこえ」
9 吉田満「戦艦大和ノ最期」
10 坂井三郎「大空のサムライ」