岸見 一郎(著)
中央公論新社
本の詳細
「はじめに」より
問題についてどう考え、問題を解決するために何ができるかを知るためには真剣に考え抜かなければなりません。しかし真剣であることと深刻であることは別のことです。眉間に皺を寄せ、涙を流しても問題は解決しません。冷静になって渦中にある問題から少し自分を引き離して問題を見直すことで初めて見えてくることが必ずあります。
ただ、こうしなさいといわれ、そのとおりにしたら解決したとしても、なぜそうすればよかったのかを理解しなければ、別の問題が起こった時に応用が利かないことになります。数学や物理学を学ぶ時に、公式の意味を理解しないで、応用問題の答だけを覚えても力がつかないのと同じです。
本書の重点は、多様な問題への答えそのものではなく、答えに至る道筋、解決の方針を考え理解することにありますから、そのような成約があってもこの目的を達成できると思います。今すぐには答えが出なかったり、問題の性質上答えが出せないこともありますが、答えに至る道筋を考えることには意味があります。
「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」
オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーが創始した「個人心理学」。
日本では「アドラー心理学」と呼ばれるこの心理学をもとに、
対人関係に焦点をあてたシンプルで実践的なテクニックを掲載。
自分自身のこと、友人との関係、職場の人間関係、
恋愛、夫婦や親子関係 ……。
「〇〇で困った」という具体的シーンを設定し、
さまざまなケースを検討することで
問題を解決します。
どのように考えれば、深刻さから脱して、
「なんとかなる」と思えるようになるための手引きです。
目次
はじめに ― 「何とかなる」と思えるための手引きとして
第1章 アドラー心理学の基本
悩んでも始まらない/なぜ悩むのだろう/過去を問題にしない/「悪いあなた、かわいそうな私」をやめる/今、何ができるか/変われるのは自分だけ
第2章 自分自身のことで困った
自分が好きになれない
性格は自分で決めたと考えるアドラー
他の人と同じなのがいや
自由に生きるための代償とは
他者の評価が気になる
人の評価を気にすることの問題点
プレッシャーに弱い
なぜプレッシャーを感じるのか
やる気が出ない
長期的、短期的に何をしたいか
第3章 友人との関係で困った
自分のことがいわれているのではないかと
二つの可能性について考える
気分の浮き沈みの激しい人とのつき合い方
過剰に反応しないこと
他の人が何を考えているかわからない
自分にとって当たり前のことでも…..
人から笑われている気がする
自分のことがすきですか/
今この瞬間の人生をふいにしないために
第4章 職場の人間関係で困った
若い人がすぐに会社を辞める
関係が近くなければ援助できない/
「注意すること」と「叱ること」
上司が感情的で困る
「何が」いわれているかだけに注目する
意地悪な同僚がいる
親も上司も同僚も間違うことがある
仕事を辞める決断ができない
自分の人生は自分が生きていい
第5章 恋愛関係で困った
好きな人に別の好きな人が
この世で強制できない二つのこと
彼が嫉妬深く束縛する
「信頼」と「信用」はどう違うのか
彼がメールの返事をくれない
権力争いに入らないために
彼との関係を長続きさせたい
今ここに集中するために
彼にわがままをいってしまう
怒りは人と人を引き離す感情
遠距離恋愛で会うのが間遠に
次に会う約束を忘れる心理
彼に素直になれない
ぎこちない言葉のやりとりも悪くない
第6章 夫婦、パートナーとの関係で困った
一緒になったのに罪の意識が
予防線を張るための感情なのか
夫が浮気した
「忘れられません」は本当のことなのか
夫がすぐに怒る
怒る夫に注目しない/
条件付きではなく相手を受け入れる
夫との会話がない
わからないと思ってつきあうほうが安全
第7章 親子関係で困った
娘が家に帰ってこない
子どもの課題に親は介入できない/
手出しをしないで見守っていくという距離/
人の課題に土足で踏み込むと起こること/
私たちがいつもかぶっている仮面
子どもが親離れしていく
子育ての最終的な目標とは
子どもが嘘をつく
ただ自分が変わればいい
子どもがたばこを吸う
先回りして援助する必要はない/
親が覚悟すれば関係は変わってくる
子どもが学校でいじめられている
いじめを切り札にする子どももいる
父親と話したくない
決心したほうが先に努力するしかない
年老いた親が心配
この人と初めて会うのだと思えばいい
義母がいわれのないことをいう
「でも、私はそうは思いません」/
あえて苦手な人とつきあってみる
親が干渉する
子どもの課題、親の課題
親に反抗してしまう
親が自分で何とかするしかない
門限が早すぎる
ルールは本来、共同体を維持、
運営するためのもの
親がこどもに無関心
親には期待しないほうがいい/
自立へ向けての勇気
あとがき
岸見 一郎(著)
中央公論新社